In the name of love act29
ケイトにプロポーズをしたその日。
エドワードはアパートの自室で待っているだろう人物に全てを話す決意をしていた。
それがけじめでもあり、これ以上はエドワードの精神が保たなかった。
責めは全て受け入れるつもりだ。どんなに詰られようと、はっきりと決別の意思を示す覚悟はできていた。
呼び鈴を押すと、いつものようにレイがドアを開けてくれる。
「おかえり、エディ」
笑顔で出迎えたレイに、エドワードにずっしりとした罪悪感が圧し掛かり、胃がキリキリと痛みだす。そして部屋の中を見渡して、そこが妙にすっきりしていることに気づく。短い同棲生活で増えたレイの所持品が無くなっていたのである。
言葉を失くしているエドワードに、レイがその理由を話す。
「今日、『CHINON』に電話したらようやくユベールに繋がったんだ。で、先に荷物だけ持っていってもらったんだ」
目を見開いて言葉を発せずにいるエドワードに、レイが美しい笑顔を見せる。
「今まで、本当にありがとう。お世話になりました」
深々と頭を下げて、日本式の礼を示す。
言葉が何も出てこなかった。言うべきことなど何もなかった。
レイはエドワードの心の変化を察していたのだろう。
そして、自ら身を引く覚悟を決めた。
「これ、少ないけど今までお世話になった分だから」
封筒を差し出すレイに、中身は見ずとも推測ができるものをエドワードは押し返す。
「…いらねーよ」
あっさりしたものだな、とエドワードは思う。
レイと一緒に過ごした日は今日で48日。それがこんな金で換算され精算される。それが悔しくもあり、悲しくもあった。そんなことを感じる権利などエドワードにはないというのに。
封筒を受け取ってくれないエドワードにレイは苦笑して、顔をみることさえしない男に最後の言葉をかける。
「どうか、幸せに…」
微かな風がエドワードのそばを通り過ぎ、ドアが閉まる音を遠くに聞いた。
それが二人の最後だった。
エドワードは理不尽な怒りのままに、胸ポケットから携帯電話を取り出すと、荒々しい手つきでメモリーを押す。
悠然と通話に応じた相手に向かって行き場のない激情をぶつけた。
「レイと別れた!満足か、この野郎!!」
怒りをぶつけられた相手は気分を害するわけでもなく、むしろ嬉しそうに『そうか』と答えた。
「仕事は受けてやる!でも金は一切受け取らない!わかったか!?」
自分でもなぜこんなにも憤っているのか分からない。
いずれにせよ、レイとは別れるつもりだったのだ。
それが予期せぬ形で訪れただけのこと。
なのに、激しい感情がエドワードを支配し、抑えることができない。
「さっさと迎えに来いよ!またアイツ、迷子に…」
その時目に入った物に、思わずエドワードの言葉が止まる。
テーブルの上には、レイが毎日書きなぐっていた楽譜ノートが残されていた。
忘れていったのかと思い、手に取って、そこに記されたタイトルにエドワードの目が釘付けになる。
『Eddy my love』
その瞬間、激しく渦巻いていた怒りが一気に凪いだ。
ページを開くと、そこにはぎっしりと音符の羅列が書き込まれていた。
音楽の知識が全くないことが悔やまれた。このノートには一体どのような美しいメロディーが刻まれているのだろう。どれほどの愛が謳われているのだろう。
「レイ、レイ…!!」
雑音を発する携帯電話を放りだし、エドワードはレイの残した愛の残骸を抱きしめた。
もう取り戻すことできない、幸せな日々を。
〜To Be Continued…〜![]()
↑読んで下さってありがとうございます。次回「In the name of love」最終回です。
最後までよろしくお願いします♪





コメント
えっ、ちょ、ちょっと・・・!
ど、どうしよう!
エディが可哀想で、レイちゃんが健気で泣きそうですが!
ほ、ホントに終わり?
ホントに二人は終わっちゃったのですかー?(うるさい)
チクショウ!アーサーめ!
・・・以上、魂のシャウトでした。
次回が最終回ですか・・・。一体どうやって収まるのか、心配でなりません。気になるー!
No:110 2007/09/30 00:07 | あきら #-URL[ 編集 ]
スイマセン…(・・;)
いらっしゃいませ、あきらさま♪
エディを応援して下さったあきらさんには悲しいご報告です。
私もエディ好きなんで、どう言っていいのか分かりません…。
レイちゃん、泣き虫なのに泣かなかったんです。
親(作者)としては、ホント、レイちゃんを褒めてあげたい気分です。
まだまだお話は続くので(エディはもう出てきませんが★)、これからもよろしくお願いします♪
No:111 2007/09/30 00:22 | れおん #-URL[ 編集 ]
わーん
私も泣きそうです・・・。
ああ、切ない・・・。
でもこんなにも読み手の心を揺さぶる小説を
かけるれおんさんには脱帽です。
くっそー、アーサーめ!
というか、泣いてしまいました・・・
No:112 2007/09/30 06:36 | 星歐花 #xxmTR6YcURL[ 編集 ]
実は…☆
いらっしゃいませ、星さま♪
脱帽ですか!?ひえ〜〜〜(+o+)
私も星さまのエロ可愛い小説には、いつも脱帽でございます…☆
実は、私もこのお話を書きながら泣いてました…(T_T)
書いてると、つい感情移入してしまうんですよね…。
次回、アーサー再び…★
No:113 2007/09/30 09:04 | れおん #-URL[ 編集 ]
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