In the name of love act5
ガルストンがアーサー・ギルフォードのマンションへやって来たのは、すべて綿密な計画を基にしてだった。騒動でレイは仕事を干されて部屋におり、かつ、自分がアーサーの傍を離れられる時間。今日はまさにうってつけの日だった。
前日、レイとたまたま話す機会を持てたのも幸いだった。人間の裏を読むことを知らない愚かな青年はすっかりガルストンを信用したようだった。階下のインターフォンで名乗るとあっさりと部屋へ招き入れてくれた。
これから何が起こるかも知らず、無垢な笑顔がガルストンに向けられる。
「今日は大事なお話があってお訪ねしたんですよ」
「え…と、僕にですか?」
レイはわずかに訝しげな表情をしたものの、ガルストンが笑顔だったためにさほど深刻さを感じていないらしい笑みを浮かべている。
「そう、あなたにしか話せないことです」
ガルストンの微笑はただの仮面である。その下に隠された謀略をカモフラージュするための擬態だ。しかしレイの目には信頼というフィルターが掛けられており、彼の真意を探ろうともしない。
ガルストンは内心嘲り笑いながら、優しい口調で語りかける。
「あなたにしか、あの方を救うことはできないのですよ」
「僕にしか…?」
レイは、ハッとしたように眼を見開いてガルストンの言葉に食いついてきた。
簡単に獲物は掛かった。あとは上手く追い込んでやるだけである。
(愚かなイエローめ。お前などが現れなければ…!)
アーサーがレイと初めて遭遇したとき、誰よりも近くにいたのがガルストンであった。その時のアーサーの様子を今でも忘れられない。
まるで魂を抜かれたような呆けた顔。初対面の人間を見つめるには不自然なくらい長い時間、レイの容貌に見入っていたアーサーに、ガルストンは嫌な予感を感じていた。レイが男だと分かった後は尚更、意外と情にもろいアーサーのためにレイの情報から同情の価値がある項目を削除してアーサーの勘違いを誘発する報告書を提出した。それで二人の交わりを断てると思っていたのがガルストンの最大の誤算だった。
どういった経緯からか二人は愛し合うまでになった。障害が二人をさらに強く結びつけたのだとしたら、ガルストンのしたことは逆効果だったと言わざるを得ない。
しかし今はもう、一時の気の迷いと放置できる状態ではなくなった。
世界経済の中枢を担っていると言っても過言ではない『IBC』グループが傾くようなことになれば、その被害は甚大なものになる。色恋など、ましてや同性愛スキャンダルなどという下らない理由でグループがどうにかなってしまうなど、絶対にあってはならないことなのだ。
アーサーにはその血筋に見合ったどこぞの名家の令嬢と婚姻を結び、その地位を盤石なものにしてもらわなければならない。そのためには、アーサーを誑かすこの女もどきの男を排除する必要があった。
「レイジさん、あの方と別れて頂けませんか…?」
瞬間、レイの瞳が驚愕の形に見開かれた。
〜To Be Continued…〜![]()
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪





コメント
コメントの投稿