Perfect Love act26
アーサーは眩しいものを見るように、激昂したレイを見つめていた。おどおどと人見知りするレイよりも、いつも笑ってすり抜けていくレイよりも、今ここで泣き叫んでいるレイが一番人間らしい。
レイは忌々しいものを吐き出すように自分の過去を語った。それはアーサーが想像していたよりも、もっと過酷なものだった。
「実の父親に犯され続けて、しまいに父は気が狂って自殺した!母親はそんな僕を持て余して、まるで存在しない人間のように扱った。僕は親にさえ愛されない無価値な人間なんだって、でも、そんなの耐えられないから、僕は…!!」
記憶を消した。実際それは上手くいったのだろう。しかし、人間は忘れたと思っていたことでも完全に忘れているわけではない。ただ、記憶の中の一番取り出しにくい奥の引き出しに仕舞われただけなのだ。
「なのに、僕はまた思い出した…。ケイゴの顔が父親と重なって…」
その時の記憶がよみがえったのか、レイの顔がいっそう苦しげに歪む。ケイゴというのが例のユニットを組んでいた男のことだと、すぐに思い出した。おそらくそのケイゴという男から暴行を受けたことで、過去の父親との記憶が呼び覚まされてしまったのだろう。確かにひどい話だと思う。幼いレイが、二年前のレイがそんな苦痛に一人で耐えなければならなかった、そのとてつもない孤独を思うと胸が痛んだ。
「レイ」
涙で濡れた頬を二つの手で包み込む。親指で滴をぬぐって、アーサーは真っ直ぐにレイの瞳を捉える。たった今、生まれ直したばかりの不安気に揺れる瞳が、恐る恐るアーサーをみつめている。
「自分のことを無価値だなんて言わないでくれ。私にとって君は、ダイヤモンドよりも価値のある宝石なのだから」
レイは食い入るようにアーサーを見つめる。そこに何か意味のあるものを見出そうとするかのように。
「愛している。おそらく初めて君に出会った日から、君を愛していた」
レイの瞳が大きく揺れ、今にもくずおれそうになる身体をアーサーが優しく抱きとめる。
「そんなの嘘だ…、僕は…」
「私の想いまで偽りにしないでくれ。私は本気だ」
「でも…ぼくは……」
拒む方向に行きそうな言葉をアーサーが遮る。
「否は聞けないな。君にだってわかっているだろう。君には私が必要だということを」
言葉を発せずにいるレイに、アーサーがたたみかける。
「命にかけて誓う。私は君を決して孤独にはしない。君だけを見て、君だけを愛し続ける」
腕の中のレイが、ギュッと小さくなった。「うぅ…っ」と堪えるような声が聞こえ、レイが新たな涙を流していることを知る。
アーサーはそれを受諾と取った。レイの身体を少し離すと、涙でグチャグチャになっているレイにそっとキスをした。それは以前に暖炉の前でしたような奪うようなキスではなく、労わるように優しいキスだった。
〜To Be Continued…〜![]()
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