Perfect Love act24
父親の危篤を知らされたのはレイの発作が治まった、その直後だった。タイミングの悪さを呪いながら、レイをタクシーに乗せシノン氏の邸宅まで送らせた。情緒不安定なレイを一人で帰らせるのはひどく気がかりではあったが、シノン氏に連絡を入れ、無事にレイが戻ったことを知ると一先ず安心した。
急いだおかげで父親の死に目には間に合うことができた。安らかな終わりだった。アーサーは父親の死を悲しむ間もなく、その後は慌ただしい日々が続いた。レイに会えない時間、アーサーはずっと考えていた。レイが呟いた言葉の意味を。
一か月が過ぎていた。すでにアーサーの身辺は落ち着きを取り戻していたが、レイとの連絡が取れず悶々とする日々だった。故意に避けられていることは気づいていた。思い当たる節もなく、あるとするならば最後に会ったあの日の出来事なのだろう。
待っているのはアーサーの性に合わない。
多少強引でもレイと話をしなければならないと、アーサーは再びパリへと向かった。
パリに到着すると、その足ですぐさまシノン氏の邸宅を訪ねた。
レイに会いたいと言うと、シノン氏は盛大に溜息をついて首を横に振った。
「だめだ。今レイは君に会いたくないと言っている。一か月前から、そう、君に最後に会った日から様子がおかしい。何か心当りがあるんじゃないかね?」
責める口調ではなく、問いかけるように訊かれてアーサーは言葉に詰まる。アーサーとてその問いに答えられる正解を持っていないのだ。
「それは私にもわかりません。でもこのままじゃいけないことは貴方にもわかっているはずです。だから私は今日ここに来た。レイと話をするために」
シノン氏は複雑な表情でアーサーを見ていた。笑っているのか、悲しんでいるのか、年輪を重ねたその顔からは明確な感情を読み取ることができなかった。
「できるというのかね、君に。私にすらできなかったというのに」
「いや、貴方にはできないんです。その愛ゆえに」
そうか、と呟いてシノン氏はフッと笑った。それは諦めのようにも、アーサーの若さを嘲笑ったようにも見えた。
シノン氏は一度邸宅の中に戻ると、無言のままレイを連れてきた。腕に小さな犬を抱えて、所在なさげに俯く姿は初めて会った頃の人見知りの激しいレイに戻ってしまったようだった。
「ショコラは置いていきなさい」
「いや……」
「ギルフォード氏は君に話があるそうだよ。ちゃんと、話し合ってきなさい」
渋るレイから犬を取り上げて、シノン氏はレイの背中を優しく押す。
「行ってきなさい」
それでもなお尻込みをするレイに、アーサーが手を伸ばした。
「行こう、レイ」
真っ直ぐに伸ばされた手にレイはおずおずと自らの手を重ねた。
〜To Be Continued…〜![]()
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