Perfect Love act23
苦しんでいるレイを前に、アーサーは意外にも冷静に対処することができた。以前にも見たことがある。これはパニック障害の発作だ。
アーサーはレイのもとに駆け寄ると、上半身を抱き起こして優しく包み込むように自分の胸にもたれさせる。
「大丈夫だ、落ち着いて。落ち着いて呼吸するんだ」
ガーナー医師から発作が起きたときの対処法を教わっていた。発作が起きても病院に連れて行く必要はない。発作は十分から二十分ほどでおさまる。強い不安感からくるもので、本人を安心させてやることが一番の薬なのだと。
苦しむレイの背中を撫でてやりながら、それでもアーサーは平常心ではいられない。代われるものなら代わってやりたいと心からそう思った。
何事が起きたのかと様子を見にきた店員や客をジェスチャーで(大丈夫だ)と伝えて下がらせた。できれば大ごとにはしたくない。
「レイ、大丈夫だ。私がそばにいるから」
なおも苦しそうに荒い呼吸を繰り返すレイに、アーサーも次第に不安になってくる。本当にこの発作は収まるのだろうか、もしかしたらこのままレイは死んでしまうのではないのだろうか…。不吉な考えばかりが頭をよぎり、しかし、それを必死に打ち消す。
どのくらいの時間が経ったのか。アーサーにはひどく長い時間に感じられたが、実際には五分ほどが経過した頃、レイの呼吸は徐々に落ち着きを取り戻しはじめた。
「大丈夫か、レイ?」
アーサーが問いかけるとレイはわずかに首を縦に動かした。ぐったりと脱力してしまっている身体をアーサーはしっかりと抱きしめて嘆息する。
「ああ、よかった…」
心の底からの安堵して、それが口をついて出た。ひとまず発作が治まったことに安心していると、抱きしめている身体から小さな振動を感じた。アーサーがそっとレイの様子を伺うと、レイは声を殺して泣いていた。時折こらえきれず漏れ出た声が「…ウッ」と詰まるような音になって身体を震わせている。
「どうしたんだ、レイ…?」
涙がアーサーのスーツの襟元を濡らしたが、そんなことはどうでもよかった。何が彼に涙を流させているのか、その理由が知りたかった。
「どうして…」
くぐもった鼻声がかすかに聞こえた。
「もう、思い出したくなんかないのに…」
それはアーサーに向けて放たれた言葉というよりは、独り言のようなつぶやきだった。
〜To Be Continued…〜![]()
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