Perfect Love act21
アーサーはレイの手を引いて更衣室へ向かう。その足取りは、レイが足をもつれさせそうなほど早い。
「早く服を着てくれ。…風邪をひくぞ」
同性を前に目のやり場に困る、などとは言えない。何よりもこれ以上、レイの裸身を他の人間の目に晒したくなかった。それなのにアーサーの苦悩を知らないレイは、「プール、温かかったんだよ」と、あくまで無邪気だ。押し黙るアーサーに、レイはついに声を不安げに曇らせる。
「アーサー、まだ怒ってるの?」
「…怒ってない」
「怒ってるよ。…ねぇ、何で怒ってるの?」
他人の怒りに敏感なレイは、アーサーの反応が憤っているように感じられるらしい。言葉で伝えなければ、レイはまた誤解する。アーサーは自分の言葉に至らなさを反省して、足を止めた。
急にアーサーが立ち止まったので、レイが背中に衝突して「ワッ!」と声を上げる。
「…君は自覚が無さすぎる」
「自覚?何の自覚?」
「他人が君を見てどう思うか、そういうことだ」
真珠色の目にも眩しい白い肌や、薄桃色の胸の飾り。女性よりも余程細いウエストや、小振りなヒップなどを見て、男がどんな妄想を抱くのかレイにはわからないようだった。性的嗜好については完全なるノーマルだと信じていたアーサーでさえ、レイにはセクシャルな欲望を感じている。いや、むしろレイの魅力は自分のようなノーマルだと信じて疑わない人間にこそ訴えるものがあるのかもしれない。
自分の容姿について自覚を持ってほしいと伝えたかったアーサーの言葉は、レイにはやはり伝わらなかったようだった。
「みんなと同じ水着着てるだけだよ?あれ、もしかして後ろ前逆だったかな!?」
あわてて水着を確認しているレイに、アーサーは深い深いため息をつく。どうやら本当に何もわかっていないらしい。天然なのだから余計に性質が悪い。
あのインストラクターだって内心何を考えていたか分からない。心の中でこの白い肌を蹂躙していたかもしれないと思うと、それだけで煮えくりかえりそうに腹が立つ。
中身は10歳の少年であるレイに、そういった自意識を求めるのは無理なことなのかもしれない。アーサーは諦めて話題を変えた。
「それで、君は何で急に水泳なんかやろうと思ったんだ?私に言えばいつでも教えてやったのに」
言ってから、それは無理だと気づく。半裸のレイを前にしてアーサーが平常心でいられるとは思えない。手取り足取り教えているうちに妙な気分になりそうだ。
「アーサーには内緒で泳げるようになりたかったんだ。泳ぐの上手になったら、驚かせようと思って…。それに、いつまたボートが沈むかわからないしね!」
レイは冗談を言ったつもりだったらしいが、アーサーはとても笑う気分にはなれなかった。渾身のジョークをしかめっ面で返されたレイは、「アーサー、ノリ悪ーい」と不満そうに頬をふくらませた。
「とにかく服を着てくれ。話したいことがあるから」
目のやり場に困るから、とはやはり言えないアーサーだった。
〜To Be Continued…〜![]()
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