The last love word act3
吾一はまるで靴が鉛でできているかのような重い足取りで歩を進めている。それでいて地面に足が付いているような感覚がしないのは、吾一自身、未だにこの現実を受け止めきれずにいるからなのだろう。
今、吾一は里村のマンションに向かっている。玲人がいるだろうその部屋へ、おそろしく惨い報告をするために。
吾一とて、こんなことは口にしたくもない。嘘だったと思いたい。しかし脳裏には、しっかりとそのシーンが刻み込まれている。残酷なまでのその記憶が、否応なしに吾一に現実を突き付ける。
…里村が、亡くなったのだと。
目の前で起きた惨劇に、吾一はしばらく呆けてしまっていた。先ほどまで里村が立っていた場所には今、大型トラックが、まるで巨大なモンスターのように鎮座している。
何が起きたのか、吾一には全く理解が出来なかった。
「さ、とむらさん…?」
里村は何処に行ってしまったのか。自分に何かを言いかけて、突然目の前から消えてしまったあの男は、一体何処に行った?
周囲は悲鳴と野次馬のざわめきで随分と騒がしかったが、吾一の耳にはどんな音も聞こえてはいなかった。吾一だけが時間を止められてしまったかのようにその場に立ち尽くし、動けずにいた。
どれだけの時間が経ったのか。呆然と固まってしまっていた吾一は、コンビニの店員らしき男に肩を揺さぶられた。
「お客さん、大丈夫ですか!?」
おかげで吾一はようやく正気に戻ることができた。
(そうだ。里村さん、探さなきゃ)
救急車を呼べ!という叫び声がする。人がはねられていると誰かが言う。
里村だと吾一は察して駆けつける。人だかりが出来ているその場所には、ぐったりとコンクリートの上に横たわる里村がいた。
「里村さん!!」
悲鳴のような吾一の声に里村がわずかに反応した。
「…ごいち。吾一か…?」
かすれた小さな声が自分の名を呼ぶのを確かに聞いた。
駄目だ、しゃべるんじゃないと、誰かが言う。
死ぬぞ、と誰かが不吉な言葉を口にする。
しかし里村は、うっすらと開けた目を彷徨わせて吾一の姿を探す。何度も自分の名前を呼びながら。
「ここです、里村さん!オレ、ここにいます」
里村はもう目があまり見えていないようだった。焦点の合わない目で声のする方向を見やって、吾一には一度も見せたこともないような穏やかな笑みを浮かべた。
「…ごいち、おまえに、たくしたい、ものが………」
まるで、その一言一言を発するために命を削っているかのような声に、吾一は怖ろしくなる。今にも目の前の人が消えてしまいそうで、怖かった。
「駄目です!もう何も言わないでください、里村さん…!!」
しかし里村は必死に、伝えたいことがあるのだと口を開く。
吾一に大切な何かを託したいのだと、命を振り絞るように言葉を紡ぐ。
「ひきだしに、…わたしの、おもい…が」
「やめてください…!もう、なにも…!!」
止めてくれ。これじゃ、まるで遺言じゃないか。
こんな言葉は聞きたくないと吾一の頭が否定する。
そんな吾一の必死の願いも届かず、里村はなおも口を開く。
「わたして、ほしい…、あの…ひとに」
遠くからサイレンが聞こえてくる。その音を聞いて安心したのか、言うべきことを言い終えて、務めは果たしたとでも思ったのか。里村は最後に深く息を吐くと、ゆっくりと目を閉じた。安らかに、まるで幸せな眠りにつくかのように。
「里村さん…?」
吾一の問いかけに返事はない。その意味をうっすらと理解はできても、吾一は否定したかった。そんなはずはないと、吾一はその嫌な考えを必死に否定する。
「里村さん!!」
肩を揺すっても、大声で呼びかけても返事はない。周囲の人間が諦めたように、止めろと吾一を制止したが、吾一は諦めたくはなかった。
「目を、開けてください、さとむらさん…っ!!」
どんなに声をかけても、揺さぶっても。
里村の目が開くことは二度となかったのである。
〜To Be Continued…〜![]()
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【追記】
ブログ拍手お礼☆
『The last love word act1』にコメント下さいましたゲストさま♪
「レイちゃん大好き」とのコメント、ありがとうございます!!
とってもうれしいです〜〜〜゚.+:。(*≧∇≦*)゚.+:。
スイマセン、今回、こういった展開になってしまったことを深くお詫びいたします_(._.)_
レイちゃん、幸せになるといいですね…。・゚・(ノД`)・゚・。
(他人ごとですか…)





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