The last love word act2
その日、岡田吾一は食後のコーヒーを買い求めるためにいつものようにコンビニへ立ち寄っていた。吾一が飲むためではない。隣でハンドルを握る仏頂面の男のためである。
「ホット買ってこい」
不機嫌そうな顔のまま、里村は千円札を財布から抜いて吾一に差し出す。決して本当に不機嫌なのではなく、もともとこういう顔なのだということは今では吾一も理解している。ただ一つ例外があるとすれば、それは彼の恋人だろう。
吾一には強面を崩さないその顔が、あの美しい恋人の前では顔面の筋肉と言う筋肉がその役割を放棄してしまうということを、吾一は知っている。普段は感情を表に出さない里村が、雄弁に愛情を語るようにその表情を綻ばせることも、吾一は知っている。
だから吾一は時々そんな里村をからかいたくなる。たまには自分にも少しは優しく接して欲しいと、言いたくもなる。
「またっすか〜?オレ玲人さんに『あんまりコーヒー飲ませないでね』って言われてるんっすよね〜。飲み過ぎると胃によくないからって。心配かけちゃダメっすよ、里村さんも若くないんすから」
最後の一言はさすがに言いすぎたかと、鉄拳が飛んでくるのを覚悟していたが、一向にそんな気配はない。恐る恐る目を開けてみると、里村は吾一から表情を隠すように顔を背けている。よく見れば耳がほんのりと赤い。
「ふざけてないで、さっさと行ってこい」
憤慨したような口調も照れ隠しだとわかるから、吾一は全く恐ろしさを感じない。名前を出しただけでここまで反応を示すその純情ぶりは、吾一でも可愛いと思ってしまう。
「はいはい。じゃあ買ってきますね」
声がニヤけるのを抑えきれず、ウヒヒと気持ちの悪い笑い声をもらすと、
「おい、吾一!」
これ以上は我慢ならないと里村が声を荒げたが、吾一は逃げ出すように車から降りてドアを閉めた。
「へへっ。じゃ、行ってきます」
吾一の抜け目ない笑顔に、(まったく…)という呟きが聞こえてきそうなしかめっ面をして、里村は運転席で腕組みをした。
(ホント、いまだに新婚さんなんだよな〜)
二人の交際が始まって、吾一が知る限り三年は経っているはずなのにいつまでも初々しさが残る二人の関係が、吾一は秘かに羨ましく思っていた。
男性同士という、少々変わったカップルではあるが、二人のお互いを想い合う気持ちは同性どうこうという問題は別にしても深く濃密なもので、短いスパンで女性に振られてはまた懲りずに付き合いを繰り返している吾一には二人の関係が理想的に思えてならない(玲人があの容姿でなければ、吾一も拒絶反応があったかもしれないが)。
いつか自分も玲人のような、美人で、ちょっと天然が入っているところが可愛い、ほんのりエロさが漂う彼女が欲しいと願っているが、最近は何となくナンパをするのも飽きてしまい、半年ほどフリーの状態が続いている。
(いいよな〜、里村さんは)
三年前の正月に偶然に里村の部屋にいる玲人を見てしまって以来、もう隠しても仕方がないと諦めたのか、里村と玲人と三人で何度か顔を合わせることがあった。そのたびに見せつけられる二人の仲睦まじさには当てられっぱなしだった吾一である。特に玲人の、アンドロイドじみた顔のわりにドジっ子なところが吾一にはツボで、何か失敗した後にシュンとされると里村が傍にいることも忘れて、思わず抱きしめたくなってしまうほどの可愛いらしさである。あれで自分よりも一回り以上年齢が上というのが、吾一には信じられない。
(里村さんのものじゃなけりゃ…な)
不埒な妄想をしかけて吾一は、(そんなこと考えるだけでも処刑もの)と、かぶりを振って頭を切り替える。
吾一がコンビニの入口のドアの取っ手に手をかけたその時、「吾一!」と自分を呼びとめる里村の声がした。振りかえると里村が車から降りているのが見えて、吾一は、「何すかー?」と間の抜けた返事をかえす。
その時である。
里村の背後に大型のトラックが全くスピードを緩めずに迫ってきているのが見えた。コンビニの駐車場に車を停めるにしては不自然なスピードに、吾一は危険を知らせることもできずただ見ていることしかできなかった。
「吾一、やっぱりな…」
里村が何かを言いかけて、自分の背後に迫るトラックの気配に気付く。
振り向いた時にはもう遅かった。トラックはそのままのスピードで里村に突っ込んできた。ふわりとスローモーションのように里村の身体が浮き上がるのを、吾一は声も出せず見つめていた。
〜To Be Continued…〜![]()
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【追記】
ブログ拍手お礼☆
Eさま♪
何とかレイちゃんのお話も完結させることができました。
レイちゃん、また不幸の気配でスイマセン…。
主人公いじめはまだまだ続きます…_| ̄|○





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