Perfect Love act15
鮮やかな新緑の中をメタリックカラーの車が颯爽と走り抜ける。まるで緑を切り裂くかのような鋭い走りは、英国製スポーツカーの真骨頂だ。
コンバーチブルタイプの車はオープンにしてあり、爽やかな風を直接感じることができる。
アーサーはサングラスの下から何度も助手席を盗み見ていた。
まさかレイが誘いに乗ってくれるなんて思ってもいなかった。断られることを承知で、それでも何度でも頭を下げる覚悟を決めていたのに、一度目の誘いでOKをもらえたのは何かの間違いではないかと思ってしまったほどだ。
レイは最初、緊張で体を強ばらせていたが(自分を強姦しようとした相手と一緒にいるのだから無理もないことだ)、森の中に入ると少しずつ表情が和らぎ、多少はリラックスしたようだった。
レイと外出することが決まったとき、レイからのリクエストが「緑のたくさんあるところ」だった。ガーナーからのアドバイスで、人の多い場所や狭い空間は避けるようにと言われていたので選択肢が限られていた。それもあり、あまり遠出は出来ないことを考えるとアーサーには、このパリ郊外にあるギルフォード家の別邸しか思いつかなかったのである。
「寒くはないかい?」
アーサーが問うと、レイは緩く首を横に振る。
「ううん、大丈夫」
レイはそう答えたが、薄手のニット一枚という姿は、初夏とはいえ寒そうだ。
「おうちはまだ遠いの?」
レイの問いにアーサーは苦笑した。
「もうずっと前からうちの領地内に入っているよ」
「え?」
「森に入った辺りからギルフォード家の領地だ。もう少しで門が見えるはずだ」
「すごーい!」
子供の無邪気さではしゃぐレイに、どうやらこの場所を選んだのは正解だったと胸を撫で下ろした。
門を通り抜けるとすぐに石造りの建造物が姿を現す。それを見たレイが、「わぁ〜!」と感嘆の声をもらす。
「お城みたい!すっごくきれい!」
アーサーからしてみればただの古ぼけた建物だが、レイの喜ぶ顔が見られるならまんざら捨てたものでもない。
「元々ここの領主が19世紀後半に建てた城だ。土地ごとうちで買い取った。中は改装してあるから外観ほど古くはない。後で案内しよう」
「うん。でも、先にお庭を散歩したいな」
城の前には対岸が見えないほど大きな人口の池と、英国式に整えられたローズガーデンが広がっている。レイはそれを興味津々に見つめていた。大きな瞳を輝かせてはしゃぐレイを見ていると、アーサーまで気分が高揚してくるようだった。
「わかったよ」
アーサーは自然と笑みを浮かべて、そう答えた。
車を玄関の前に停めると、待ち構えていたように中から初老の男性が現れた。
「お久しぶりでございます、アーサー様」
恭しく頭を下げたのは、昔からこの館の管理をしているモーリスだ。
車から降りてきたアーサーとレイに平等に微笑みかけている。久しぶりの来客を心から喜んでいるようだった。
「すぐにお茶の準備をさせましょう。どうぞ中へ…」
「いや。その前に私たちは少し庭を散策してくる。茶は後でいい。それと彼に何か羽織るものを」
モーリスの持ってきたカーディガンをレイに羽織らせて、二人は早速庭の散策に出た。
〜To Be Continued…〜![]()
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