Perfect Love act8
ユベールが電話を終えて帰ってくると、そこにレイはいなかった。アリーシャの姿もない。360度見渡してもそれらしい人物は見つけ出せなかった。
なぜか、ひどく悪い予感がした。
「レイを見なかったかね?」
一番近くにいたスタッフに尋ねても知らないという答えしか返ってこない。
ユベールは数人のスタッフを使ってレイを探させたが、レイの姿はどこにもなかった。フロア中を回るうちに、男性に囲まれてバカ騒ぎをしているアリーシャが見つかった。
レイの行方を尋ねると、すっかりアルコールに飲まれたアリーシャがグラスを振りまわして言った。
「レイ?レイならぁ〜、アーサー・ギルフォードとどっか行っちゃったんじゃない?」
このシチュエーションで一番聞きたくない名前を耳にしてユベールは、目の前が真っ暗になるのを感じた。悪い予感は的中してしまったのである。
ユベールがレイと離れていた時間は十分にも満たない。短時間でのあまりにも鮮やかな手口に、もしかしてこれは全てギルフォード氏の仕組んだことなのではないかと思えてくる。
今思えば、あの時掛かってきた電話も同じ用件を繰り返すばかりの不自然な内容でユベールを引き留めて時間稼ぎをするための工作だと思えば納得がいく。
このパーティーの参加者には招待状が配られ、顧客とファッション関係者、それに限られたマスコミ関係者しか会場に入れないようになっていた。ギルフォード氏に招待状など送った覚えもないが、本物さえ手に入れば簡単に複製できる。
受付をしていたスタッフが、レイとアーサー・ギルフォードらしき男性が30分前に出て行ったと報告した。
30分は長い。ユベール達が延々とフロアの中を探しまわっている間に、二人はパリ市外へと出て行った可能性もある。
これ以上、自力での捜索は不可能だった。行き先に思い当たるふしもない。
いっそ警察に通報しようかと思った。これは立派な誘拐事件である。しかし、スタッフの必死の説得により思いとどまった。レイもたまにはハメを外したい時もあるだろうと彼らは言うのである。
(レイはそんな子じゃない)
レイの人となりをよく知るユベールは、レイがそんな浅はかな考えでギルフォード氏について行ったのではないと信じていた。おそらくあの男の手練手管に流されて、優しいレイは断り切れなかったのだろう。
しかしこうなってしまっては、ギルフォード氏の良心と神に祈るしかない。
(私がもう少ししっかりしていれば…)
(あの時、電話に出ていなければ…)
自責の念に駆られながら、ユベールは長い夜を過ごさなければならなかった。
〜To Be Continued…〜![]()
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