Love Paradox act19
►2008/01/29 20:00
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一人席に残された里村は、玲人が先ほど言いかけた言葉の続きを思った。
『僕が今好きなのは…』
もしかしてそれは自分なのだろうか?
こんな何の取り柄もない中年男に、あの、荻久保玲人が?
考えれば考えるほどそれは現実味を無くし、里村は自信を失っていく。
そんなわけがないと否定しようとする自分と、そうであったならと願う自分がせめぎ合う。
どちらにせよ今の時点ではそう思う根拠が少なすぎ、里村は玲人の言いかけた言葉に翻弄されるしかなかった。
「お待たせして申し訳ありません」
三分ほどで玲人は戻ってきた。しかしその表情は硬いままで、彼は席に着くなり手付かずだったカクテルを一気に飲み干した。突然の行動に面食らう里村を尻目に、玲人は濡れた口端を手の甲で拭う。
「すいません…」
その謝罪が何に対してのものなのかは分からなかったが里村は、
「…いえ」
とだけ返して玲人の言葉を待った。
俯いて沈黙してしまった玲人の顔を里村はそっと盗み見る。
視線の合う心配のない今ならば、不躾にその美貌を見ることを許される気がした。
まるで見る者の心の奥底まで見透かすような、澄んだ瞳。その瞳で見つめられると、里村はどんなに平静を保とうとしても動揺してしまう。その瞳は今重く伏せられ、長い睫毛が頬に影を落としている。平時はバラ色に染まっているその頬も色を失い、蒼白にさえ見えた。
玲人にこんな表情をさせているのは、件の男なのか、それとも自分なのか里村にはわからなかった。
薄い胸が上下して、玲人がようやく言葉を発する。
「…里村さん」
玲人は意を決したように顔を上げ、真っ直ぐ過ぎる視線を里村に向けてくる。やはり里村はその視線に絶えられず、逃げるように顔を背けてしまう。
「僕には今好きな人がいます」
はぁ、と気の抜けた返事をして里村はタバコをふかす。
期待ばかりが膨らむのを里村は、そんなはずはないと自制する。
なぜ今そんな話を自分にするのか、今日の玲人はいつもにも増して読めない。
「その方は普通のお仕事をなさっている方で。まだ数えるほどしかお会いしたことはないんですけど僕はとてもその方に惹かれています」
里村は硬直していた。
指一本動かせない。
里村は、誤魔化しきれないほどの熱い視線を感じて絶句する。
タバコの灰が灰皿に運ばれることなく、ポトリと床に落ちた。
「…好きなんです」
〜To Be Continued…〜

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『僕が今好きなのは…』
もしかしてそれは自分なのだろうか?
こんな何の取り柄もない中年男に、あの、荻久保玲人が?
考えれば考えるほどそれは現実味を無くし、里村は自信を失っていく。
そんなわけがないと否定しようとする自分と、そうであったならと願う自分がせめぎ合う。
どちらにせよ今の時点ではそう思う根拠が少なすぎ、里村は玲人の言いかけた言葉に翻弄されるしかなかった。
「お待たせして申し訳ありません」
三分ほどで玲人は戻ってきた。しかしその表情は硬いままで、彼は席に着くなり手付かずだったカクテルを一気に飲み干した。突然の行動に面食らう里村を尻目に、玲人は濡れた口端を手の甲で拭う。
「すいません…」
その謝罪が何に対してのものなのかは分からなかったが里村は、
「…いえ」
とだけ返して玲人の言葉を待った。
俯いて沈黙してしまった玲人の顔を里村はそっと盗み見る。
視線の合う心配のない今ならば、不躾にその美貌を見ることを許される気がした。
まるで見る者の心の奥底まで見透かすような、澄んだ瞳。その瞳で見つめられると、里村はどんなに平静を保とうとしても動揺してしまう。その瞳は今重く伏せられ、長い睫毛が頬に影を落としている。平時はバラ色に染まっているその頬も色を失い、蒼白にさえ見えた。
玲人にこんな表情をさせているのは、件の男なのか、それとも自分なのか里村にはわからなかった。
薄い胸が上下して、玲人がようやく言葉を発する。
「…里村さん」
玲人は意を決したように顔を上げ、真っ直ぐ過ぎる視線を里村に向けてくる。やはり里村はその視線に絶えられず、逃げるように顔を背けてしまう。
「僕には今好きな人がいます」
はぁ、と気の抜けた返事をして里村はタバコをふかす。
期待ばかりが膨らむのを里村は、そんなはずはないと自制する。
なぜ今そんな話を自分にするのか、今日の玲人はいつもにも増して読めない。
「その方は普通のお仕事をなさっている方で。まだ数えるほどしかお会いしたことはないんですけど僕はとてもその方に惹かれています」
里村は硬直していた。
指一本動かせない。
里村は、誤魔化しきれないほどの熱い視線を感じて絶句する。
タバコの灰が灰皿に運ばれることなく、ポトリと床に落ちた。
「…好きなんです」
〜To Be Continued…〜
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