恐怖のバクテリア〜バクテリア王国へようこそ〜

御厨鈴音(みくりやれおん)が勝手に作り上げた恐れるにたらぬ王国。小説とも呼べない駄文ばかりですので、読むときっと後悔します。そんなの嫌だ、という方と18歳未満の方、BLという二文字に嫌悪を感じる方は今すぐお逃げ下さい。
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御厨 鈴音

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You are my shining star act1

►2007/11/02 20:00 

 新連載「You are my shining star」始まりました。
 時間軸を少し戻して、「Primrose Way」のact10の辺りにレイが一度日本に帰った時から始まります。「Primrose」で出てきたレイちゃんが探していた女の子のお話です。ちなみに非BL、恋愛要素も無しです。アーサーはちらりと出てきますが。なので、そういうお話が苦手…(+_+)という方はれおんさんは一か月お休みしていると思って12月、また来て下さい(^_^;)どうしても書きたいお話だったんで…。BLオンリーな方には申し訳ないです。
 でも、アーサーが一人で悶々としている間、レイちゃんが何を考えていたかとかアーサーへの思いとかも書いていきたいと思っているんで、気になる方は読んでみてください(^_^;)
 そして今回からレイちゃんの名前の表記が「荻久保玲人」になります。日本が舞台なので。歌姫シエラと玲人のサクセスストーリーを楽しんで頂けると幸いです。

 最悪の再会、act1です。
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 煙草のにおいとチープな香水のかおり。紫煙は視界をふさぐほどに籠り、薄暗い店内を更に暗澹たるものにしていたが、空調の悪さにケチをつける客はこの店内にはいなかった。
 店の一番奥に設置された、ステージとも呼べない台の上に一人の女が上がると店内の喧騒はたちまち歓迎ムードのそれになる。客のほとんどはこの女が目当てで、彼女の歌はこの辺りでは知る人ぞ知るこの店の名物だった。
「今日は何を歌ってくれるんだい?」
 客の問いに女は嫣然と微笑み、
「ダイアナ・ロスの『Do You Know Where You're Going To』」
 と答えると、意を得たようにすぐにピアノの伴奏が始まる。
 日本にありながら外国人の客ばかりのこの店ではこうした定番曲のほうが受けがいい。
 女の伸びやかな声がマイクを通して店内に響き渡る。日本人でありながら、黒人にも負けないソウルフルな歌声はたちまちのうちに客を魅了した。
 そんな程よい緊張感の漂う店内に、新たな客が入ってきた。女は集中力を途切れさせることなく、その客に視線をやる。
 ほっそりとしたシルエットの男は店に入るなり、女を注視したまま棒立ちになっていた。薄暗い店内にいながら色つきのグラスを掛けたままで、性別の判断のしづらい顔立ちをしていた。サングラスを掛けて変装したつもりだったのだろうが、女にはそれが誰なのかすぐにわかった。
 この四年半、一日たりとも忘れたこともなかった男。自分の夢を託し、それを完膚なきまでに踏みにじった男。なぜここにいるのか、そんなことはどうでもいい。憎しみが未だ彼女の中に燻っていたが、今は歌うことだけに集中していたい。誰にも邪魔されない、自分だけの聖域。それを犯す権利はあの男にだって持ち得ない。
 曲が終わると店内は割れんばかりの拍手と賛美の声で満たされる。
「次は?何かリクエストある?」
 彼女が客に問うと、一番前に座っていた男が声を張る。
「Star-Spangle Banner(米国国歌)歌ってくれよ」
 体格から横田あたりからやって来たと思われる軍人がそうリクエストする。
 周りからは嘲笑を含んだブーイングが起きたが、
「仕方ないわね、今日は特別よ」
 大の男達をまるで子供をたしなめる口調で大人しくさせて、伴奏者にそっと目配せをする。
 マイクを取り払って歌い始めた女の声は、この小さな身体のどこから、というほどの声量で聞く者全てを圧倒した。それが飽きるほど聞きなれたメロディであっても、彼女の歌声には新鮮な感動と驚きがあった。
 女は視界の隅で、カウンターに腰掛けた男を捉える。男はやはり自分から視線を固定させて、まるでそのポーズのまま固まってしまったかのように微動だにしなかった。
 そしてそれは曲が終った後も解かれることはなかった。
 一仕事を終えた歌姫は、衆人環視の中、彫刻と化した男につかつかと歩み寄る。
 小作りな顔にあまり似合っているとは言い難いサングラスを、有無を言わさぬ素早さで奪い取る。現れた美貌に涙の筋があるのを見て、女の怒りに火が付いた。カウンターに出されていた水の入ったグラスを掴むと、その中身を白皙の美貌に向かってぶちまけた。
 驚きに目を見開いた男に、女は赤い唇を歪ませて言い放った。
「今更どの面下げて会いに来たわけ?荻久保玲人大先生?」


〜To Be Continued…〜




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You are my shining star act2

►2007/11/03 20:00 

 いつも本文の最後にブログ村ランキングのバナーを貼っていたのですが、「You are my…」では貼っておりません。理由は、今回のお話がBLじゃないからです。今まで応援して下さった方、本当に申し訳ありません(^_^;)でも、トップページのバナーはそのままですのでそれでも「頑張れ!!」と応援して下さる方はそちらからお願いします。
 なんか、気まぐれ?我が儘?すいませんホント(^^ゞ

 心からの謝罪、act2です。
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「今更どの面下げて会いに来たわけ?荻久保玲人大先生?」
 前髪をべったりと額にはり付けたみっともない姿の玲人を見て女は多少溜飲が下がる思いがした。突然の女の暴挙に呆然と口を開けたままの玲人に、さらに言葉を続ける。
「いいザマだわね、大先生。あなたみたいな人がこんな場末のバーに何の御用かしら?」
 ようやく自分を取り戻した玲人が、ひどく心許無い表情で女を見上げてくる。まるで道端に捨てられた子犬のような縋るような瞳に女は内心動揺した。玲人はすでに齢(よわい)30を超えているはずだが、母性をくすぐるような愛らしさは全くそんな年齢を感じさせない。
 反則だ、と女は心中で叫びながら精一杯玲人を睨みつける。
「同情しに来てくれたの?華々しくあんたのプロデュースでデビューするはずだった女が、こんなしょぼくれたバーで細々と歌ってる姿を笑いに来たってワケ?」
 女の怒りは尽きない。あの時、予定通りにこの男のプロデュースでデビューできていたなら、こんな転落人生を送ることもなかったのだと。デビューが立ち消えになってからの苦労を思うとこんな仕打ちくらいでは気が済まない。
 すると、玲人は女の想像もしなかった行動に出た。玲人はおもむろに椅子から立ち上がると床に膝を付き、頭を下げたのだ。
「一華(いちか)ちゃん、ごめん。本当に、ごめんなさい」
 床に額が付きそうなほど深く頭を下げられて、言葉を失くすほど驚いたのは今度は女の方であった。しかも本名で名前を呼ばれ、思わずうろたえてしまう。
「ちょ、ちょっと!やめてよ、もう…!!」
 しかも周りの視線が突き刺さるように女を責める。外国人がほとんどで日本語でのやり取りが分からないとはいえ、顔を合わせるなりいきなり水をぶちまけ、一方的に責めたて土下座までさせた女に非難が集まるのは当然のことだった。しかも相手は、あの飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭の美貌のミュージシャン、レイジ・オギクボである。しかも、玲人の憐憫を誘ういたいけな表情もいけない。どう見ても自分が悪役ではないかと、女は憤る。
「…もう!!ちょっと、こっち来て!!」
 女は玲人の二の腕を掴み立ち上がらせると、出口まで引きずるようにして連れ出した。
 店の外に出ると、人通りの少ない路地で女は苛立ちを玲人にぶつける。
「一体何のつもり!?こんな所にまで来て、今更何の用だっていうのよ!!」
 まさか本当に謝罪のためだけに訪れたなどというバカな理由ではないだろう。
 現在、玲人はアメリカを拠点に活動している。売れっ子である玲人がわざわざ時間を割いて日本に来るからには相応の理由があるに違いなかった。
「ずっと、君のこと気にかかってたんだ。あの後、日本からいなくなったって聞いて探してた」
「だから何よ。探してどうするつもりだったわけ?」
「謝りたかったんだ。僕の所為で、君の未来を狂わせてしまったことを…」
 …玲人は本当に謝罪のために自分に会いに来たらしい。
 必死に憤っていた自分が急に馬鹿らしくなった女は唖然として、深いため息をついたのだった。


〜To Be Continued…〜


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You are my shining star act3

►2007/11/04 20:00 

 遅れてきた約束、act3です。
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「アンタ、馬鹿じゃないの?」
 一華(いちか)と呼ばれた女は心底呆れかえったようにそう言った。
 玲人は自分に会いに、しかも謝罪をするためだけに日本に来たという。しかも自分を捜すために興信所に依頼してその足跡を辿っていたとも。
 一華がアメリカに渡ったと聞けばアメリカに行き、日本に帰国したと聞いては日本で情報を集め、必死で探したのだと玲人は言う。
 そんな熱心な言葉を聞いていると、一華を今まで支えていた根本が崩れそうになる。
 玲人への怒りを原動力として、いつか見返してやると、そればかりを考えていた。だからこそ、一華は今まで自分と言う人間を維持してこられたのだ。
「そうかな?でも、一華ちゃんに会えてよかったよ」
 馬鹿と言われてもなお嬉しそうに微笑む玲人の顔を見て、一華の怒りはもう完全に萎えてしまっていた。
「…その一華って名前、止めてくれない?」
「なんで?」
「今は『シエラ』って名乗ってるの。一華なんて名前、とっくに捨てたわ」
 何故か玲人が悲しそうな顔になる。
「捨てたなんて…。ご両親が君を想って付けてくれた名前なのに…」
 そんな玲人の言葉に、一華はハッと鼻で笑う。
 もう両親とはデビューの話がご破算になって以来、一度も会っていない。娘に過剰なまでの期待を押し付けた両親を一華はもう両親とも思っていない。歌手になりたいと言った娘を罵倒し、デビューの話が決まったとたん手のひらを返したように娘の快挙を周囲にふれてまわり、それが駄目になった途端その態度は再び冷たいものになった。
 そんな両親に一華は未だに反発心しか覚えない。
「一華ちゃんのご両親、心配なさってたよ」
 玲人の思いがけない言葉に、一華がギョッとなる。
「ちょっと、あんたまさかうちの親に会ったんじゃ…」
 一華のその問いに、玲人がなんの悪気もない顔で「うん」と頷く。
「ご両親なら一華ちゃんの消息知ってるんじゃないかと思ってさ」
 もう呆れて物も言えない。確かに、行方の知れない人間の消息を知るには肉親に聞くのが一番有効かもしれなかった。だが、よりによってあの関係の破綻した両親に尋ねるとは。怒りと羞恥と気まずさやらで、もう言葉もない。
「すごく心配してたよ。ずっと連絡してないんだって?駄目じゃないか、ご両親に心配かけちゃ」
 誰のせいだと思っていると罵ろうとして、玲人のひどく寂しげな微笑が目に入る。それを見た一華は勢いよく捲くし立てようとした言葉を思わず飲み込んだ。玲人の微笑は一華の胸を落ち着かなくさせた。何が、彼をそんな表情にさせたのか聞いてみたい気もしたが出会いがしらに反発した手前、そんなプライベートに立ち入るような問いも出来ない。
 一華の沈黙を反省と取ったのか、たちまち玲人が満足そうな笑みになり、あの見ている者を不安にさせるような微笑は跡形もなくなる。おそらく自身がそんな表情をしていたことを玲人は自覚していないのだろう。
「でも、『シエラ』っていい響きだよね。うん、なかなか売れそうな名前」
 何だかスターっぽいよね〜、と呑気にのたまわった玲人に一華は思わず顔に疑問符を浮かべた。
「売れそうって…どういうこと?」
 一華の問いに玲人はウキウキと嬉しそうな顔をしてにっこりと一華に笑いかけた。
 …それはそれは、ご機嫌な様子で。
「もちろん、君のデビューの話。日米同時デビューなんてどうかなあ?」
 あまりのことに、今度こそ本当に絶句してしまった一華、もといシエラであった。


〜To Be Continued…〜


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You are my shining star act4

►2007/11/05 20:00 

 確かな決意、act4です。
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「日米同時デビューなんてどうかなあ?」
 玲人の放った衝撃的な発言は一華もといシエラを唖然とさせた。そして次にシエラの感情を支配したのは激しい怒りだった。
「私を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!今更そんな話持ち出されて、ホイホイ乗るとでも思ってるの!?」
 五年前、歌手デビューの話が決まった時はあまりの嬉しさに、これは夢なのではないかと何度も疑った。しかもプロデュースはその当時から日本国内ではヒットメーカーとしての呼び声も高かった荻久保玲人。その頃から玲人の周囲は不穏な空気が流れ始めていたが、デビューには何ら支障はないと言われていたし、まさかそんなことで自分のデビューがオシャカになるなんて思ってもいなかった。
 あの事件が起こるまでは…。
「馬鹿になんて…。僕は本気だよ!」
「うるさい!!もしデビューするとしたって、あんたなんか真っ平よ!!」
 玲人が悪くないのは分かっている。あの事件は玲人が組んでいたユニット「L-ing For(エリングフォー)」のボーカル圭吾(けいご)が全ての不幸の根源だ。覚せい剤の所持で二度も捕まり、挙句の果てに相棒である玲人に暴行を加えた男…。解散話を持ちかけられて激昂したのが原因だったらしいが、それにしてもその暴行の様は凄まじいものであったことを報道で知らされた。日本国内はその事件の話題で終日持ちきりになり、しまいには玲人が包帯でグルグル巻きにされミイラのような姿になった写真までが報道され、頻死の重傷を負った玲人は再帰不能と言われた。それでも、自分のデビューまでもがご破算になるなんて思ってもいなかった。玲人が駄目でも他のミュージシャンがいるはずだと高を括っていたが、その後に届いたレコード会社からの通告は残酷なものだった。
『君との契約は無かったことにしてほしい』
 その時シエラは22歳。新たにオーディションを受けるにはすでに歳が行き過ぎていた。最後のチャンスだった。それなのに圭吾と玲人の二人のいざこざによってシエラの夢は打ち砕かれてしまった。
 世論は大抵玲人に同情的だったが、あるニュース番組のコメンテーターは言った。こんなに話が拗れる前にもっと早い時期に解散するべきだったと。シエラも全くその意見には賛成だった。圭吾が善悪の見境もつかなくなるほどの重度の薬物依存になる前に、一度目の逮捕の時に解散していれば、玲人も自分もこんなことにはならなくて済んだのだと。
「もうあんたに振り回されるのはごめんよ。帰って!」
 もう二度と自分の前に姿を現さないでほしい。手に入るはずもない天空に煌めく星を、まるで手が届くかのように目の前に見せびらかすような真似をしないでほしい。
「…夢は叶えなくちゃ、夢のままだよ」
 それなのに、玲人はまるで何でもないことのように示してみせる。シエラさえその気になればそれは簡単に手に入るのだと。
「その夢を、僕に叶えさせてよ。…ううん、叶えてあげる」
 力強く、玲人が宣言した。思わず顔を上げたシエラは玲人の、強い意志のこもった瞳とぶつかる。
 信じてみたくなった。その、強い眼差しに込めた決意に、自分のこれからの人生を賭けてみたくなった。それは危険なギャンブルかもしれない。失敗すれば、四年前以上の心の傷を負うかもしれない。それでも、この頼りない男の言葉を信じてみたくなった。
「シエラ。君を、世界一の歌姫にしてあげる」
 揺るぎなく、まるでそれが確かな未来であるかのように玲人がそう言い放った。
 玲人の言葉は、まるで甘美な睦言のようにシエラの身体を震わせた。


〜To Be Continued…〜


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You are my shining star act5

►2007/11/06 20:00 

 レイの説得、act5です。
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 タクシーは夜の東京の街を突き進む。シエラの視線は流れていくネオンに向けられていたが、耳だけはしっかりと玲人の言葉を捉えていた。
「さっき、ステージでの君の歌を聞いた時、すごく感動した。涙が出ちゃうくらいね」
 飾りのない玲人の言葉は、嫌みなくシエラの心に入ってくる。そのことだけでも自分がもう玲人を許してしまっていることを認めざるをえなかった。しかしそれはシエラにとってさほど問題ではなく、むしろ精神的に楽になったくらいだ。本当はシエラ自身、玲人に本気で腹を立てていたわけではない。玲人を見返してやる、という強い怒りを支えにしなければ歌を続けていくことができなかった。ただそれだけのことだったのだとシエラは気づく。
「五年前とは比べ物にならないくらい声に深みが出たね。雰囲気もすごく変わったし。今の方が僕は好きだな」
 デビューの話が流れた後、このまま日本にいてもチャンスは巡ってこないと考えアメリカに飛んだ。今から思えばそれは両親や自分自身からの逃避でもあったのだが、とにかくあの頃はがむしゃらに夢を追うことしかできなかった。NYに滞在し、ウェイトレスのバイトをしながらオーディションを受けまくった。しかし、シエラに幸運の女神が微笑むことはなかった。時にはレコード会社関係者だと名乗る男に騙されて身体を要求されたこともあった。一度の関係でデビューできるならと、一夜の関係を持ったこともある。それらの過去はシエラの人生最大の汚点だった。あんな信用のならない誘いに乗らなければならないほど、あの当時の自分は追い詰められていた。しかし、道に行き詰まり全てに絶望しても歌を歌うことだけは止められなかった。もし五年前の自分と今の自分が違うとすれば、それらの経験がシエラの歌に深みを与えたのだろう。
「君の歌を世界中に届けたいと思った。是非僕にその手助けをさせてほしい」
 今度こそ信じてもいいのだろうか?今度の幸運は、自分の手の内から逃げたりはしないのだろうか?裏切られ続けたシエラの心は、玲人の言葉を信じたいという思いとは裏腹に疑心暗鬼になってしまう。喜びから絶望へと突き落とされる、あの無常感はもう味わいたくはない。
「君がのし上がるために、僕を利用すればいい。そのために僕がいると思ってくれて構わないから」
「…あんた、ホントに馬鹿ね」
 玲人の本気を感じて、シエラは少しだけ怖くなる。まさに今のシエラの気分はバンジージャンプを跳ぼうとしている人のそれと同じだった。シエラは今、あと一歩踏み出せば落下する位置に来ている。だが、その一歩がなかなか踏み出せない。
 自分に自信がないわけではない。しかし、ローティーンアイドル全盛のこの時代、27歳のシエラが受け入れられるかどうかは疑問だった。
 そんなシエラの不安を感じ取ったのか、玲人がシエラの手を取り優しく握りしめた。
「大丈夫だよ。何も心配しなくていい。君は君の歌を歌ってくれればいいから」
 玲人の言葉はシエラの背中を優しく押してくれた。最後の一歩を踏み出したシエラはいっそ清々しいほどに迷いを振り切っていた。
(うじうじ悩むなんて私らしくない。燃え尽きて灰になったら、骨はコイツに拾ってもらえばいい)
 年齢的にも最後の挑戦だった。玲人の本気に賭けてみたい。そう思った。
「…ところで、エロおやじ」
 そう言ってシエラは、力いっぱい玲人の手を振り払った。
「このタクシーはドコに向かっているのかしら?」
 シエラの冷やかな一瞥も意に介さず、玲人は呑気な笑顔を浮かべて言った。
「僕の泊まってるホテルだよ?」
 …シエラが再び怒り狂ったのは想像に難くない。


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You are my shining star act6

►2007/11/08 20:00 

 確信犯の微笑、act6です。
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「どうしてあたしがあんたのホテルに行かなきゃなんないワケ!?」
 喚き立てたシエラに、玲人が飄々と答える。
「一人じゃ寂しいもん。ほら、これからは仲良くやっていかなきゃならないし、親睦を深めるにはちょうどいいじゃない?」
「勝手に決めないでちょうだい!!」
 まだ歌手デビューについてははっきりとした返事はしていない。それなのに玲人はすでにその気である。
「ホテルに女連れ込んで何するつもりよ、このエロおやじ!」
 おやじという呼び名がこれほど似合わない男もそうそういないが、玲人もすでに33歳になっているはずだ。十分おやじと呼ばれる年齢にふさわしい。
「酷いな〜、初めて『おやじ』って言われたよ〜。ショック〜」
 本気でへこんでいる玲人にシエラがさらに追い打ちをかける。
「おやじにおやじって言って何が悪いのよ、このエロおやじ!!」
 やっていることは今までシエラを騙してきた男達と同じである。旨い話を持ちかけておいて身体を要求する。玲人が真剣にデビューの話を持ちかけてくれたことも分かっているし、玲人がシエラに下心を持っていないことは明らかなので、シエラとて本気で詰っているわけではない。
「大体あんたネコのくせに女に乗っかろうなんてよくやるわ」
 これはシエラの腹いせである。これまでさんざん放っておかれた恨みをタダで済ますつもりはなかった。
「アーサー・ギルフォードとあんなに派手に浮名を流しておいて今更女と付き合うつもり?」
 日本ではあまり知られていないが、当時NYに住んでいたシエラは毎日のように報道されるゴシップにうんざりしていた記憶がある。玲人が暴行を受けた後、消息不明なのは聞いていたが、よもや女性モデルとして活躍し、ヨーロッパ一の大富豪と恋仲になっているなど想像だにしなかった。そのこともシエラの怒りの原因の一つであった。
 すると玲人はひどく傷ついた顔をして俯いた。
「…僕はゲイだということを恥じるつもりはないけどアーサーとはもう別れたんだ。だからと言って君に手を出すつもりもないよ。だからそんな風に言わないで」
 冗談のつもりだったが、玲人が予想外に落ち込んでしまい、シエラの方が反省する羽目になった。
「…悪かったわよ。でも、あんたのホテルに行くのとは別。アパートに帰してちょうだい」
「ふーん。でも今日はシエラちゃんのお友達は都合がいいのかな?」
 突然の玲人の言葉にシエラは思わず固まる。もしかして、玲人は自分が友達の家に居候していることや、時折恋人を連れ込むその女友達から部屋を締め出されていることを知っているのだろうか?
「あ、あんた、まさか…」
「シエラちゃんのことなら何でも知ってるよ。君を捜すために依頼した興信所の人から色々報告してもらったからね」
「………!!」
「ネットカフェよりは僕と一緒のベッドの方が寝心地はいいと思うけどな」
 玲人がどういうつもりかは知らないが、シエラは知らぬ間に自分のプライバシーが侵害されていたことに腹を立てていた。しかし、そんなシエラに玲人がふと真剣な顔つきで見つめてきた。不安げに瞳を潤ませて、言う。
「昨日、すごく怖い夢を見たんだ。一人で、あんな誰もいない広い部屋で、本当に寂しかったんだ…。だから、一緒にいて?」
 これが玲人じゃなければ一発くらい平手打ちが入り、言葉の限りに罵っていたことだろう。しかし、恐ろしいことに玲人の美貌からその言葉が発せられると思わず胸が締め付けられるような憐憫が醸し出されるのだ。シエラが男だったなら、間違いなく玲人は押し倒されていたことだろう。
「…この、小悪魔め…!!」
 小さく呟いた言葉を玲人は耳に入れていただろうに、「なあに?」と小首をかしげて見せる仕草は間違いなく確信犯のものだった。


〜To Be Continued…〜



 
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You are my shining star act7

►2007/11/10 20:00 

 決意の朝、act7です。
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「…何が『寝心地いい』よ!」
 朝から早々に機嫌を損ねたシエラは、夜中に散々自分を蹴り起こしてくれた男を見下ろす。
 平素でも幼く見えるその美貌が、寝顔になるとさらに幼く感じられる。無邪気に眠るその顔を見ていたら無性に腹が立ってきた。シエラはいたずら心を出して玲人の形のいい小さな鼻を抓む。
「ん…んぐ…」
 呼吸器官を塞がれた玲人が苦しそうな声を出して目を覚ます。
「ふんぐ…ぐるじひ…」
「バーカ。私が起きたんだから、あんたも起きなさい」
 時計は10時を指していた。窓から射す光もすでに煌々とまぶしい。
「あんたの寝相サイアク。何回蹴られて起こされたと思ってんのよ」
 寝乱れてボサボサの髪をかき上げながらシエラがぼやく。ごめん、と玲人が呟いたがその声に反省の色は見られない。
「シエラちゃんのおかげでよく眠れたよ…。快眠、快眠!」
「こっちはおかげで寝不足よ」
 バスローブ一枚というあられもない姿でもあまり羞恥心が湧いてこないのは、玲人が邪な目でシエラを見ないからだろう。昨夜は約束通り、同じベッドに入っても玲人がシエラに触れてくることはなかった。疲れていたのか、玲人はベッドに入るなり熟睡してしまったのである。期待していたわけではなかったが、玲人から関係を求められれば応えることも致しかたないと思っていたシエラはあまりにもあっさりとしたその態度に拍子抜けしてしまったほどである。
 なぜ玲人が同じベッドに寝ることを要求してきたのかは謎だが、玲人が自分に性的な行為を求めていないことにホッとしている自分がいた。否、もしくは玲人が本当にゲイで女性に性的な魅力を感じない性質だということも考えられるが。
 ベッドを下りたシエラに「どこに行くの」と玲人に問われて、「シャワーよ」と答える。
 昨日再会したばかりで、ほとんど初対面と言っていいほどなのに、もう何年も一緒に居たような気安さがある。『親睦を深めるため』などと玲人はほざいたが、実際のところこの「お泊まり会」は想像以上の効果をもたらしたようだ。
 シャワーを終えて部屋に戻ると、リビングの大きなテーブルの上に綺麗に盛りつけられたサンドイッチや果物が大量に並べられていた。
「は…。何これ?ティーパーティーでもするつもり?」
 すでに食べ始めていた玲人が口をもごもごと動かしながら答える。
「ここのサンドイッチ美味しいんだけど量が少ないから十人前頼んでおいたよ。シエラちゃんも食べて?」
 玲人はこれを全部食べるつもりらしい。シエラはその量の多さに圧倒されつつ、一切れ手に取る。
「シエラちゃん、今日のご予定は?」
 お行儀悪く食べ物を口の中に入れたまま玲人がそう尋ねてくる。
「特にはないわ。それが、何?」
「そっか。じゃあ、今日は僕に付き合ってもらいたいんだけどいい?」
 またシエラの反発心が芽生えてきて断ろうかと思ったが、続いた玲人の言葉にその拒否の意は伝えることができなくなった。
「会ってほしい人達がいるんだ。…シエラ・プロジェクトのスタッフ達にね」
 

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You are my shining star act8

►2007/11/11 20:00 

 出会い、act8です。
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 身仕度を済ませた二人が向かった先は都内にある小さなレコーディングスタジオだった。
 一見、普通のマンションの一室にも見えるそこに入っていくと室内にはすでに数人の男が待っていた。
「おお〜、玲人!!」
 男達は玲人の姿を認めると各々に目を見開き、近寄ってきた。
「みんな…。ほんとうに、久し振り…!!」
「バカ野郎、連絡もしねぇで!!」
「連絡があったと思ったら、いきなりコレだもんなぁ?」
「急に集まれなんてさぁ。ホント、相変わらずだよな」
 文句を言いながらも男達はみな、玲人に会えたことを純粋に喜んでいるようだった。久しぶりの再会といった一場面である。
 ひとしきり挨拶をし終えたあと、玲人がようやくシエラを放置していたことに気づいたらしい。
「…ああ、ごめんごめん。こちら紹介するね。深原一華(みはらいちか)ちゃん。今度僕たちがデビューの手助けをする、我らが歌姫だよ」
「…どうも」
 27歳にもなって「ちゃん」付けで紹介されたことが妙に恥ずかしくて、つい素気ない挨拶をしてしまう。しかし集まったスタッフ達は機嫌を損ねた風もなく、概ね好意的にシエラを迎え入れてくれた。
「玲人から噂は聞いてたよ。よろしくな」
 どんな噂だよ、とシエラは内心毒づきつつ笑顔を取り繕う。
「…どうも。でも一華って呼ぶのは止めてね。その名前、嫌いなの。「シエラ」って呼んで?」
 職業柄、こんな主張の強い人間との接触は慣れているのかその場にいた誰もが揶揄するように顔を見合わせただけで、それ以上突っ込んだりはしてこなかった。
「そう、シエラね。いい響きだね」
「わるくねぇな」
 まだお互い接し方を探り合っている状態だ。しかし、ここには自分一人が紅一点で、女だからと舐められるわけにはいかない。大体、まだはっきりと歌手になると玲人に返事をしたわけでもないのにほとんど有無を言わさず連れてこられたようなものだ。シエラが多少不機嫌なのも致し方ないことではあった。
「なあ、玲人。ちょっといいか?」
 人には聞かせられない話があるらしく、スタッフの一人が部屋の奥を指さし、玲人はその男と共に別室へと消えていった。
 一人、見知らぬ男達の中に取り残されたシエラはその内の一人に声を掛けられる。
「昨日、玲人は大丈夫だったか?」
 何のことなのか分からず、シエラが「は?」と聞き返すと、
「夜だよ。あいつ、眠れてたか?」
 40代くらいと思われるその男は、シエラと玲人が昨夜共に過ごしたことを知っているような口ぶりだった。
「な、何の事?」
 別に疾しいことがあったわけではないが、未婚の男女が一つのベッドで共寝をしたとあれば、大抵の人間は誤解するだろう。しらばっくれたシエラにその男は「違うのか?」と頭を掻いた。
「おとといの夜、あいつから電話があってな。怖い夢見た、眠れないって泣きつかれてよ。一時間ほど会話に付き合ってやったんだけどよ。今日はやたらと顔色いいから、昨日はよく眠れたんだろうって思ったんだが」
 しばらく話がよく読めず、シエラはその言葉の意味を辿る。昨日の夜、玲人が、『すごく怖い夢を見たんだ』と言ったのはシエラと同衾したいがための出まかせだったのではなく、本当のことだったのだろうか、と。
「久し振りの東京だしな。色々心配事もあって、精神的にも不安定になってたんだろうけど。まあ、複雑なヤツだけどあんまり気にしないで付き合ってやってくれな?」
 何のことか分からず、シエラはただ興味無さ気にふ〜んと言うにとどめた。シエラがその男の言葉の本当の意味を知るのはもう少し後のことだった。


〜To Be Continued…〜


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You are my shining star act9

►2007/11/12 20:00 

 シエラの覚悟、act9です。
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「今日のところ集まれたのはこの人数だけだけど、他にもシエラちゃんを支えるスタッフが沢山いるからね」
 玲人の言葉に、スタッフ達から笑いが起きる。
「昨日の今日で、急に集まれなんて言われたって来られるもんじゃないだろう」
 そのセリフで玲人が随分と無理を言って、今日のこの場にスタッフ達を集めたのだと知る。
「シエラちゃんの歌聴いて、電気走ったみたいにビビッときたんだよね。これは絶対にみんなに聴いてもらわなきゃ、って思ってさ」
 玲人の言葉にシエラの頭の中に疑問符が浮かぶ。玲人がシエラの歌を聞きに来ていたのはまだ昨日の夜のことである。玲人はいつの間にこのメンバーに連絡を取っていたのだろうか?それを玲人に問うと、
「シエラちゃんがシャワー浴びてる間にね」
 という返答がかえってきてシエラはただただ驚くばかりだった。男としては頼りなく見える玲人だが、その行動力はかなりのものである。
 話はシエラの知らぬところで進んでいた。シエラももう、腹を括らなければならないだろう。いつまでも返事を引き延ばすようなことは潔くない。優柔不断はシエラが最も嫌うものの一つだった。
「…これからお世話になります。よろしくね」
 シエラの言葉に、スタッフ達から次々と手が差し伸べられた。その時初めて彼らと連帯感のようなものを感じることが出来た気がしたシエラである。彼らと握手を交わしながら玲人を見やると、ひどく嬉しそうな笑顔がそこにあった。



 多忙な玲人は明日には再びアメリカに戻らなければならないとのことだった。
「ホテル、そのまま使っててくれていいよ」
 玲人はそう言うが、宿泊費はもちろん玲人の懐から出ているわけで、いくら玲人がアメリカで大成功を収めてかなりの収入を得ているとわかっていても、遠慮したくなるのが日本人の性である。
 しかもこの部屋はセミスイート、一泊20万円。玲人が本格的に日本に帰国する一か月後までの金額を考えると恐ろしくなる。
「いいわよ。友達のとこ戻るから」
 シエラがそう言うのを玲人が強い口調で遮る。
「ダメ。ネットカフェなんかで寝て体調崩されても困るし。僕が安心するためのお金だと思って、ここにいて欲しい。いい?」
 強引にそう言い切られて、ネットカフェの効きすぎたクーラーのせいで風邪をひいたことのあるシエラはそれ以上反論できなくなった。
 そしてその日の夜も玲人は、ソファで寝ると主張したシエラを例の如く憐憫を誘う言葉と仕草で説き伏せて、結局一緒のベッドで寝る羽目になった。そして前日同様に、何度か足蹴りを食らい目を覚ましたシエラなのであった。


〜To Be Continued…〜




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You are my shining star act10

►2007/11/13 20:00 

 玲人の威光、act10です。
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 一か月後、玲人は二年間暮らしたNYから引き上げて日本への帰国を果たした。実に、あの事件から約四年半の年月が経過していた。
 マンションをすでに購入していると言っていたが、まだ諸手続きが済んでいないため入居はまだしばらく後になるということで、玲人はシエラの泊まるホテルに宿泊することになった。
 到着して早々、玲人はスタジオに籠り、デモ曲の制作に入った。
「これから忙しくなるからね」
 という玲人の言葉の通り、それからは怒濤の勢いで曲作りに励んだ。
 玲人は20ものデモ曲をたった三日で作り上げ、それらにシエラの書いた詩がつく。この一ヶ月間シエラに課せられた宿題であった作詞がここで役にたった。自分の書いた詩がメロディを付けられてそれなりの曲になっていくのは恥ずかしくもあり、誇らしくもあった。それら20曲にシエラの歌を入れるためにさらに一週間、合わせて10日余りでデモテープは完成した。その他にもPR用の写真も撮り、それらを携(たずさ)えて、玲人とシエラはレコード会社巡りをすることになったのだった。


 シエラが音楽プロダクションに入れば、あとのプロモーション活動は自動的に会社側が請け負ってくれる。何も玲人自ら足を運んでレコード会社に頭を下げるような真似などしなくて済むのだが、玲人はそうしなかった。始めはシエラへの責任感がそうさせるのかと、少々申し訳ない気分にもなったが、実際直接玲人が赴くことの効果は絶大であった。アメリカで大成功を収めた荻久保玲人が帰国してまで手掛けたプロデュース作品ということで、どのレコード会社でもアポイントなしで重役クラスの人間と顔を合わせることができた。
 改めて、玲人のネームバリューの威力を思い知らされたシエラである。
 どこへ行ってもデモテープは快く受け取ってもらえたし、曲を聞いていないにも関わらず、デビューを約束してくれた会社もあったほどだった。
 あと数か月もすれば、自分の歌う曲がレコード店に並ぶ。あのデモテープの出来栄えからすれば、シエラがよほど下手な真似をしない限り、上位にランクインするのは間違いないだろう。
 事がスムーズに運びすぎて何だか実感がない、というのがシエラの本音だった。
 ほんの一か月前まで場末のバーで細々と歌っていた自分が、いきなり日本全国に顔を知られる存在になるなど、もはや夢物語の範疇だ。
 それも全て、玲人の威光のおかげなのである。
「デビューまでは確かに僕のネームバリューが必要かもしれない。でも、シエラちゃんの歌を聞けばみんな納得する。みんなシエラちゃんのファンになるよ。僕は世の中にシエラちゃんの歌を送り出す手助けをしているだけ」
 と玲人は言うが、やはり「荻久保玲人」という名前のもつ効力は無視できない。もし、シエラが無名の作曲家のもとでデビューしようとしても、それがどんなに優れた楽曲だったとしてもデビューは難しかっただろう。
 …そんな時、やはりこれは夢物語だったのだと思い知る出来事が起こる。


〜To Be Continued…〜


 
 

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