恐怖のバクテリア〜バクテリア王国へようこそ〜

御厨鈴音(みくりやれおん)が勝手に作り上げた恐れるにたらぬ王国。小説とも呼べない駄文ばかりですので、読むときっと後悔します。そんなの嫌だ、という方と18歳未満の方、BLという二文字に嫌悪を感じる方は今すぐお逃げ下さい。
07≪ 2008/08/ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫09

プロフィール

御厨 鈴音

Author:御厨 鈴音
好:ガンダムSEED、00、BL、チョコ
嫌:争いごと、魚卵、カニ
属:主腐。

最近の記事

  • 恐怖のバクテリア〜バクテリア王国へようこそ〜 (08/09)
  • The last love word act21 (08/08)
  • The last love word act20 (08/06)
  • The last love word act19 (08/04)
  • The last love word act18 (08/01)

最近のコメント

  • れおん:The last love word act13 (07/26)
  • 遠麗:The last love word act13 (07/24)
  • れおん:Perfect Love act33 (完結) (07/18)
  • シャンパンG:Perfect Love act33 (完結) (07/18)
  • れおん:Je te veux 〜after Arthur〜 act30 (完結) (06/25)

月別アーカイブ

  • 2009年08月 (1)
  • 2008年08月 (4)
  • 2008年07月 (13)
  • 2008年06月 (40)
  • 2008年05月 (28)
  • 2008年04月 (27)
  • 2008年03月 (12)
  • 2008年02月 (16)
  • 2008年01月 (8)
  • 2007年12月 (11)
  • 2007年11月 (25)
  • 2007年10月 (31)
  • 2007年09月 (31)
  • 2007年08月 (35)

カテゴリ

  • The last love word (21)
  • Je te veux 〜after Arthur〜 (30)
  • Stories 〜before Reiji〜 (31)
  • Sweet Bitter Chocolate(完結) (34)
  • Crush on You(完結) (10)
  • Love Paradox(完結) (32)
  • You are my shining star(完結) (22)
  • Primrose Way (完結) (31)
  • In the name of love (完結) (30)
  • Perfect Love(完結) (33)
  • 今日のつぶやき (2)
  • ショートストーリー (6)

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Je te veux 〜after Arthur〜 act1

►2008/05/03 20:00 

 新連載「Je te veux 〜after Arthur〜」です。
 ほとんどノープランなので、不安だらけの新連載ですが何とか頑張りたいと思っております(^_^;)
 「Primrose Way」の三か月後くらいのお話です。「Sweet Bitter Chocolate」とほぼ同時期に、アーサーが何をしていたかのお話になります。
 BL色の薄いお話になりそうですが、それでもよろしければ、楽しんで頂けると嬉しいです。




>> ReadMore
 どろどろと、底のない泥土に沈んでいくような感覚だった。
 静かに、ゆっくりと、少しずつ沈んでいく。
 這い上がろうという気もなければ、その気力もない。
 ただ自身の重みによって沈んでいく感覚に身を委ねて、世界が閉じていく瞬間を待てばいい。
 もう何もかもが煩わしく、億劫だった。
 落ちるところまで落ちてしまえばいい。
 …レイを失ったアーサーの世界は、再び色を失い、モノクロの世界に戻った。


 レイと決別したあの日から三か月ほどが過ぎていた。
 父親の死によって全てを受け継いだ『IBC』の最高経営責任者の任を解かれてまだ久しい。アーサーはみっともなくその座に拘泥することもなく、あっさりと役員会議の決定を受け入れた。今となってはCEOの椅子にしがみつき、寝食を忘れて必死に努力をしていた自分が愚かしく思える。ドラックに頼ってまで自分を鼓舞し、奮い立たせてきた、そんな涙ぐましい努力の結果が今の自分だ。
 ドラックはもう使ってはいない。幸いにも使用期間が短かったのと、量を制限していたために依存症になるほどではなかったようだ。
 しかしその代わり、アーサーはあれからアルコール漬けの毎日を送っていた。自室に籠り、毎日浴びるように酒を飲んでいる。依存しているというなら、アーサーは今、アルコール依存症と言ったほうがよかった。
 食事も取らず、ただアルコールだけを摂取する生活はアーサーの肉体と精神を次第に侵していった。
 もう、何も考えたくない。それなのに、頭に浮かぶのはレイのことばかりだった。
 今のアーサーのこんな姿を彼が見たら一体何と言うだろう?自分の所為だと、胸を痛めるだろうか?それとも、今度こそアーサーの不甲斐なさに失望するだろうか?もしかしたら、馬鹿だな〜と笑われるかもしれない。
 いずれにせよ、それはアーサーの想像の中のレイであって、実物のレイにはもう二度と会うこともない。
 誰にも気にかけられることもなく、たった一人のこの部屋で孤独に朽ちていく。こんな生活を続けていれば、そんな日が来るのもそう遠くはないだろう。
 この世に生を受けた時からトップに立つ人間として期待され続け、そうあるようにと育てられてきた。アーサーの周りには人が絶えることはなく、いつも誰かが自分の存在を褒めそやし、時にはその存在の特異さに妬まれもしたが、それ故に孤独を感じたことなど一度もなかった。
 レイを知り、その存在を得て愛し、またその存在を失った今、プラスマイナスゼロであるはずの簡単な計算式はなぜか成り立たない。玲人と出会う前の自分に戻っただけのはずなのに、この胸に巣くう虚しさと孤独は一体どこから生まれたのだろう。
 レイが自分に孤独という底なしの闇を植え付けた。恋をすることの楽しさと、愛を得る幸福も教えてくれた。しかし、それを失った代償はとてつもなく大きい。
 美しい恋人。その心も身体も、全てを愛していた。レイだけが自分のすべてだったのだと思い知るには遅すぎた。その恋の呪縛から逃げるためにレイを解放したはずだったのに、結局は日を追うごとにレイへの恋情は募るばかりだった。
 身の内を焼き尽くすようなレイへの想いは、行き場所もなくただただアーサーの心を蝕んでいく。


 そうしてますますアルコールに依存していくアーサーのもとに、意外な人物が訪ねてきた。セキュリティー万全なはずのアーサーのマンションに堂々と足を踏み入れてきたのは、かつてのレイの主治医であるニコル・ガーナー医師だった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act2

►2008/05/04 20:00 

>> ReadMore
「まったく、何だいここは…」
 入ってくるなり呆れかえった様子でそう呟いた男に、アーサーは緩慢な口調で問う。
「なんでここに…?」
 この際セキュリティの問題はどうでもよかった。問題は疎遠だった彼がどうして今、目の前に現れたかだ。
 ガーナーにはレイに出会った頃一度彼の診察所を訪ね、その後何度か電話をしたきりで何の交流もなかった。その彼が一体自分に何の用かとアルコールの残る頭で必死に考えるが、散漫な思考は一向にまとまらない。
 ガーナーはアーサーの問いに答えることなく窓際で何やら格闘していたが、開けられない窓なのだと分かると空調設備のスイッチを入れた。酒浸りのアーサーには馴染んでしまってわからなかったが、室内はアルコール臭が酷かったらしい。
 ガーナーはようやくアーサーを振り返ると、まるで汚いものでも見るように顔をしかめて言った。
「話はあんたがシャワーを浴びて身体を綺麗にして、髭をすっきりさせてからだ。鏡を見て来いよ、浮浪者も真っ青だぜ」
 酷い言われようだったが、頭が鈍っていて怒りも起きない。言われて顎を撫でると、ザラリとした手触りがしてずいぶんと長い間手入れをしていなかったことを思い出す。最後にシャワーを浴びたのがいつだったか、それさえも思い出せない。昼も夜もない生活を送っていたせいで時間の感覚さえ曖昧だった。
 呆けたままなかなか動こうとしないアーサーに、ガーナーが痺れを切らす。
「あんたの様子を見てきてほしいって頼まれてんだ。オレはあんたのベビーシッターじゃあないんだ、シャワーぐらい自分でやってくれよ」
 苛立たしげにそう言われてアーサーはようやく重い腰をあげた。ソファと一体になるほど自堕落な生活をしていたせいでひどく身体が重かった。
「俺に指図をするな。話は聞く…」
 足取りも危うくバスルームに向かったアーサーを見やり、ガーナーがポツリと呟く。
「腐っても、帝王ってとこかね…」


 改めて自分の姿をその目で確認して、アーサーはその酷さに思わず嘲笑がもれる。
 この姿を自分を知る人間に見せても、これがアーサー・ギルフォードだと気付かないに違いない。それくらい今のアーサーの姿は酷いものだった。三か月間一度も鋏を入れることのなかった髪は肩まで伸びきっていて、もつれた髪が所々で毛玉を作っていた。落ち窪んだ目は濁っていて、見る者を即座に射止めるほどの鋭さを持った瞳はその鋭利な光を失っている。頬もこけ、顔色も悪く、不精ひげが随分と伸びていて汚らしいことこの上ない。
 あの不遜な口を利く精神科医の言うなりになるのは甚だ不愉快だったが、確かに今の自分の姿はあまりにも酷過ぎる。
 アーサーは渋々ながらしばらく使っていなかったシェイバーを手に取ると、切れ味の悪くなってしまった刃に苦労しながら顔をすっきりさせた。絡まった髪はどうにもできないので、後で切るしかなさそうだった。
 ひと通り身奇麗にしてリビングに戻ってみると、テーブルの上や床に散乱していた酒びんが全て片付けられていた。勝手な事をしてくれると、アーサーが憤ると、ガーナーは相変わらず飄々とした口ぶりで「むしろ感謝してほしいものだ」と宣った。
「汚い部屋を片付けてやったんだぜ?感謝の言葉を言われることはあっても、文句を言われる筋合いはないね」
「酒は?酒はどこにやったんだ!?」
「全部捨てた。中身も全部な」
 全てが空だったわけではない。それを全て捨てられたと言われてアーサーは頭に血が昇るほどの怒りを感じた。
「勝手な事をしてくれる…!!」
 アーサーは酒をストックしている保冷庫や戸棚を探ったが、そこにある筈の酒びんまで全て処分されたことを知り、ついに怒りを爆発させた。
「勝手なことをしやがって、貴様はなんの権限をもってここにいる!?何が目的だ、この不法侵入者が!!」
 唾を吐き捨てる勢いで捲くし立てて首元につかみかかったアーサーの手を、ガーナーは簡単に振り払った。隆々とした肉体を誇っていたアーサーも、三か月の堕落した生活で随分と筋力が落ちてしまったらしい。手を振り払われただけでよろよろとバランスを崩したアーサーを、ガーナーは痛ましそうに見つめて言った。
「お前を助けてやってほしいと、同時に二人から頼まれてね。金を積まれた以上、断れないんだよ」
 子供を育てるには金がかかるんだと、三人の子持ちらしい独り言を呟いて盛大な溜息を吐く。
「助ける、だと…?誰がそんなことを…」
 自分の知らないところで交わされたやり取りに不快を感じたが、それが誰の依頼なのかアーサーには身に覚えがあっても俄かには信じがたい思いでいっぱいだった。
「誰がって、あんたには大体予想がついてるんだろうが」
 まさか、本当に。
 あまりのことに、その名前を口に出すだけで息が詰まりそうになった。
「…レイ、が………?」
「そうだよ。他に誰がいる?」
 やれやれと言わんばかりに呆れかえるガーナーを尻目に、アーサーは自分の中に湧き上がる複雑な感情を持て余していた。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(2) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act3

►2008/05/05 20:00 

>> ReadMore
 どうしてレイが…。
 ガーナーをここに派遣したのがレイだとわかり、彼がいかに自分を心配しているかが知れて嬉しい反面、他人の手に委ねたことで完全に切り離された気がして、そんなことで気落ちしている自分に笑いさえ込み上げてくる。
 いつまで自分はこうも未練がましくレイへの想いを捨てられぬまま生きていかなければならないのだろう。みっともなく落ちぶれてしまった自分は、生きているだけでも恥さらしだというのに、更に荷を課すようにこの行き場のない想いを抱えて生きていかなければならいのか。恋の傷は時間が癒してくれると人は言うが、アーサーの傷は日々その痕跡を広げて血を流し続けるばかりだった。
「フ…、なんで、レイが…?」
 口元を歪め暗い笑みを浮かべるアーサーにガーナーは言う。
「あんたを心配しているのはレイだけじゃない。あんたはこの部屋で一人ドラックと酒にまみれてのたれ死ぬつもりだったかもしれねぇけどな。そんな風になっちまったあんたに責任を感じてるヤツが他にもいるんだよ」
 ガーナーにお節介な依頼をした人間がレイの他にもいたらしい。アーサーにはそれが誰なのか推測することもできず、ただそんな感情がうっとおしく思われた。放っておけば、そう遠くないうちに死んでいただろうに、余計な情けをかけて中途半端に自分を生かそうとするその偽善には反吐が出る。それはレイに対しても言えることで、そんなに心配なら自分の目で確かめに来ればいいと思う。
 …それが自身の子供じみた哀願の歪みきった故の感情だとは本人も自覚はしていても、認めたくはない気持ちであった。
「…余計なお世話だ」
 そんな風に言い捨てたアーサーの気持ちを、もちろんガーナーは理解していた。
「バカだよな、あんたも…。そうやって虚勢張って無理をして、結局は恋人も仕事も失っちまったんだからよ…」
「うるさい、お前に何がわかる…」
 わかっている。自分がどれだけ不器用な人間なのかということくらい自覚できるだけ大人になったつもりだとアーサーは思う。
 レイに会ったばかりの頃の26歳の自分には、この世のすべてのことが自分の思う通りにできるのだという根拠のない万能感が満ちていた。それが間違いだったということに気づくにはアーサーはプライドが高すぎて、しばらくは認めることができなかった。レイが自分のもとを離れていこうとする時も、自分にはそれが阻止できるものだと信じて疑わなかった。己の万能感に酔い、レイを思いのままにできると信じていた自分の愚かさが、レイを失った原因なのだと今ならわかる。
 そして万能だと信じていた己の権力があっさりと自分の足もとから崩れ去った時、アーサーは脆くも崩壊した。盤石と思われていた権力と地位を失ってしまった今、他人に縋りつくことを許さないプライドだけがアーサーに残された。
 泣いて懇願していたらレイは自分を愛してくれただろうか。しかし、そこまで自分を貶めることのできないアーサーには、それはただの想像でしかない。
「まぁ、思っていたよりあんたがまともそうで安心したよ。ドラッグを使ってるらしいって聞いてたからな、もうとっくにイッちまってるかと思った」
「ドラッグは、もうやってない」
 それはレイからの情報なのだろう。腕に残った注射痕を見られてしまった時の憐れむような視線を思い出すと胸が痛む。ドラッグに高揚し、レイを手酷く痛めつけてしまったことは未だ記憶に新しい。生々しく自分の中に残るあの日の記憶こそが、アーサーからドラッグを遠ざけた一番大きな理由だった。
「へぇ、本当か?」
 訝しげに目を細めたガーナーに、それを証明するように左腕の袖をまくってみせた。
「ほら、跡はもうないだろう」
 依存が進めば中毒症状が発生し、幻覚や幻聴を引き起こす。果てにはその人間の命まで奪いかねない悪魔の誘惑から抜け出せたことはアーサーにとってはとても幸運なことだったと思う。しかし、もう生きていることさえ投げ遣りなアーサーにとってはそれも、どうでもいいことだった。
「確かにな。最近の跡はないみてぇだな」
 アーサーの腕にはもううっすらとしかその痕跡は見当たらない。それを見て満足そうに頷いたガーナーを、アーサーは怪訝に思う。これから何をしようというつもりなのか、ガーナーは二ヤリと笑う。
「あんた、今無職だろう。日本には『働かざる者食うべからず』ということわざがあるんだ。知ってるか?」
 ガーナーの言葉の意味を、その時はまだ知る由もない。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act4

►2008/05/06 20:00 

>> ReadMore
 ガーナーの言葉にアーサーは、だから何だと言わんばかりにフンと鼻を鳴らす。
「仕事などしなくてもこの先生きていけるだけの金はある。余計なお世話だ」
 建物や土地、株や投資資産まで合わせれば、アーサー一人の手には余るほどの額になる。派手な散財さえしなければ一生暮らしていけるだけの資産は持っている。しかしそれらさえもアーサーにとっては無用の長物といったところだ。
 しかしガーナーはチッチッチッと舌打ちをして、そうじゃねぇよと否定する。
「そういう話じゃねぇんだよ。あんたが金持て余してることなんざ百も承知だ。このことわざの深いところは金なんてもんは抜きにして語られなきゃいけねぇんだ」
 アーサーにはそうした蘊蓄じみた話は興味なかったが、止めさせるのも面倒なので言わせておくことにする。
「労働は金を得るための手段でもある。それも大事な理由だ。しかし、人はなぜ働かなければならないのか。それは社会への奉仕であると俺は考える。労働は生命であると、かのヴィクトール・ユーゴーも言っている。つまり労働なくして神からの糧を得ることはできぬということだ」
 そんなことを言ってガーナーは言葉を閉めた。一方、黙って聞いていたアーサーは、ガーナーのうっとおしいほどの正論にうんざりしていた。そんなことは綺麗ごとにすぎないと言ってやりたかった。社会への奉仕などという理由でアーサーが仕事をしていた覚えはない。アーサーが働いていたのは『IBC』の利益のためだ。それはグループ全体のためでもあり、そこに働く人たちの利益にも繋がる。それに『IBC』が立ち行かなくなればヨーロッパ経済全体にも影響を及ぶことになる。しいてはそれが世界の経済を揺るがすことにもなりかねない。
 会社経営はボランティアではない。社会への奉仕などという生ぬるい考えでまとめるには、アーサーの抱えていたものは大きすぎた。
 アーサーの無言の批判を感じて、ガーナーは口を開く。
「あんたが言いたいことはわかってる。そんな甘ったるいことを言ってられる状況じゃなかったってこともな。過去を振り返ってもしょうがない、大事なのはこの先のことだ」
 この男は何が言いたいのだろうと思う。レイから何を依頼されたかは知らないが、用件があるならさっさと済ませて帰ればいい。アルコールが切れて苛々した姿など、相手が誰であれ晒したくはない。
 心ここにあらずというアーサーの怠惰な態度に、ようやくガーナーは本題を切り出す。
「あんたに仕事を紹介してやる」
「何…!?」
 目が覚める思いのアーサーを、したり顔で見つめるガーナーは更に言った。
「あんたもこんなとこでくさってるよりだったら、身体を動かして少しは社会の役に立つべきだ」
「何を馬鹿な事を…」
 あまりにも突拍子もない話に、アーサーは呆れるしかない。
 この異端な精神科医は相変わらず理解しがたいと、アーサーはその話をまともに取り合う気もなかった。しかし次の言葉には驚きを通り越して、怒りを覚えるしかなかった。
「言っとくがあんたに選択肢はない。このまま薬物中毒の施設に入ってカウンセリングを受けるか、俺の斡旋する仕事に従事するかだ。さあ、どっちを選ぶ?」
 何様のつもりでこんな提案をしているのかと頭が煮えかえりそうになる。そんな頭のゆるみきった人間と同一視されたことも不愉快なら、ガーナーに仕事を斡旋されるという屈辱も耐えがい不名誉だった。まるで自分が支配者であるかのようにアーサーの未来を操作しようとする、その自らの身分を省みない傲慢さに怒り心頭だった。貴族として生まれてこの方、これほどの侮辱を受けたことはない。
「ふざけるな!誰がお前の言うことなどに従うものか!黙って聞いていればいい気になって、貴様は何様のつもりだ。恥を知れ!!」
 怒りの所為なのか、それとも中毒症状の所為なのか、アーサーの手が小刻みに震えていた。後者の所為なのだとはアーサーは決して認めないだろうが、ガーナーはそれを目ざとく察していた。
「ドラッグのほうは大丈夫だっただろうがな、あんたは明らかにアルコール依存症だ。もう辛くなってきたんだろう、酒が切れてヤバいんじゃないのか?」
「うるさい!!」
 いくら強がってみせても手の震えは止まらなかった。自分を制御できなくなりそうな激しい怒りも、ガーナーの所為なのかどうなのかもわからなくなってくる。喉の渇きはひどく、酒を口にしたいという欲求が焦燥をかきたて、怒りを更に増長させる。
「くそ………っ!!」
 すでに自分は人間として堕ちるところまで堕ちてしまったのだろうか。ぎりぎりで保たれた矜持が、それを否定したがっている。自分は他の人間とは違うはずだという思いが、ガーナーの提案を受け入れさせた。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act5

►2008/05/07 20:00 

>> ReadMore
 アーサーがガーナーの勧める仕事に従事することを選んだのは、更生施設に入りたくないというそれだけの理由だった。ガーナーの提示する二つの選択肢に従わなければならないという屈辱は拭えないが、確かに今の自分の姿が酷いのは認めるしかない事実であり、このままではそれこそ更生施設に入っている輩と同じレベルに成り下がってしまうのではないかという恐怖もあった。あのままのたれ死ぬよりも、自我を失うことだけは耐えられないという妙なプライドがアーサーを奮い立たせた。
 まずガーナーに連れられた店で髪を短く刈られ、黒く染められた。なぜ仕事をするのにそこまでしなければならいのか、アーサーには何の説明もない。要するに、アーサー・ギルフォードであることを知られないようにという配慮らしいが、どうしてそんな配慮が必要なのかアーサーには見当もつかない。そもそもどういった職種の仕事に就かされるのか、それすらも説明を受けていないアーサーにはわけも分からずただガーナーのすることに身を委ねるしかない。
 心の動揺を悟られることは貴族としての恥であると幼いころから叩きこまれてきたアーサーは、これから一体自分はどうなってしまうのだろうという内心の不安を表に出さぬように苦心した。
 そうして次の日、アーサーはろくな準備もさせてもらえないまま、ニューヨークへと飛ばされてしまうのだった。


 初めて体験するイエローキャブは大の大人が二人で乗るには窮屈だった。
 当然アーサーは、ウォール街辺りのビルへと向かっているものだと思っていた。それにしては自分の格好はあまりにもラフすぎて世界の経済の中心地にはそぐわないと内心不安を感じていた。しかし、二人が向かったのはそんなオフィスビルが立ち並ぶ中心地ではなかった。
 それは以前レイが住んでいたスラムによく似ていた。近年、ニューヨークのスラムの治安は驚くほど改善されているとは聞いていたが、レイをそんなところに住まわせておくのは反対だった。レイほどの美貌の人間があんなところをうろうろして血迷った男に襲われないかと心配で仕方がなかった。再会したときのあの地味な格好は、そうした犯罪の標的にされないようにというカモフラージュだったのだろうが、いずれにせよ、そこが完全に安全な場所ではないのは確かなのだ。
 アーサーから見れば到底人が住むような環境ではない住宅地の一角で、ガーナーがキャブを停めた。それまで一言も言葉を発することのなかったアーサーがさすがに呆れて口を開いた。
「おい、まさかここで一か月暮せというわけじゃないだろうな?」
「ご明察、あんたにはここで一か月生活してもらう。…ここはうちの親父の管理してるアパートメントなんだ。来いよ」
 予想はしていたが信じたくはない事実に、それまで抑えていた怒りが沸々と沸き上がる。それにガーナーが指さすアパートはあまりにも粗末なもので、レイが住んでいたアパートの室内を思い出せば、その内部は容易に想像が出来た。
「ふざけるな!私にこんな汚らしいところで一か月も暮せというのか!?冗談も大概にしろ!!」
 癇癪を起したようにヒステリックに叫ぶアーサーの声が周辺に響き渡る。怪訝そうに見つめてくる黒人たちは、どう考えてもまっとうな人間には見えない。
「じゃあ今からでも病院送りにしてやってもいいんだぜ?それともまた酒浸りの生活に戻るか?」
「ああ、その方がよっぽどましだ!」
 生温い、あのどんよりとした部屋で身も心も腐っていくのを待つ日々。それでももう構わない。放っておいてくれと言いたかった。
 しかし、次にガーナーの発した言葉に、アーサーの闘争心に火が付けられた。
「所詮あんたは変化を怖れる腰抜けだ。だから会社一つ守れない。恋人にだって逃げられる」
「…何だと?」
「親族経営なんて古い因習に捉われているから、ダメになる。見せかけだけのトップを据えてなんとか誤魔化そうとしても才覚のない経営者ではやはりどうにもならなくなった。人気に溺れて首を切るのが遅れたせいで、今年度はついに赤字決算か?」
「………っ!!」
 誰の事を指しているのかは明らかだった。しかもガーナーの言葉はアーサーが全て自覚していたことでもあったから、尚更屈辱的だった。アーサーには否定の余地もない、それが余計に腹立たしかった。
 襟首を掴まれてもガーナーは顔色一つ変えない。自分には相手を畏怖させる力さえなくなったのかと絶望的な気分になった。
 誰もが自分に頭を下げ、媚びへつらっていた。それも、『IBC』の頂点に立つ人間という威光あってこそだった。それを失ってしまった今、英国貴族という生まれもこのアメリカのスラムにあっては何の価値もない。この男はそれを試したいのだろう。地位も名誉も、アーサー・ギルフォードという名前さえ捨てた人間が一人で生き残れるのかどうか。
「…後悔するな。この侮辱は倍にして返す」
 ガーナーから手を放し、アーサーはそう宣言する。それはガーナーの挑戦を受け入れるという宣言でもあった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act6

►2008/05/10 20:00 

>> ReadMore
 古びたアパートの中に通されたアーサーは三階に住んでいるガーナーの父親に会うことになった。元々はアメリカ人であるガーナーはカウンセラー人口の多いNYでは商売にならないと、パリへと拠点を移したらしい。「パリのアメリカ人ってやつだな」とガーナーは笑ったが、未だに腹立たしい気分のアーサーには笑ってやる義務もない。
 ガーナーの父親の住む部屋に通された時、期待してはいなかったがやはり想像通りの狭さと粗末な造りに絶望した。昨日まで暮らしていたアーサーのペントハウスのリビングほどの広さもない部屋は窮屈この上ない。そんな狭い室内に本棚やらオーディオやらが所狭しと並んでいるので狭い部屋が尚更狭苦しく感じられる。部屋主への挨拶よりも室内の観察を優先して、しばらくしてようやく胡乱な態度でその人物に視線をやった。
 頭に白いものが混じっている点以外はまったくガーナーにそっくりな男だった。そして口元に浮かべた皮肉めいた笑みまでも型にはめたようにそっくりで確かに二人が親子だということは見た目にもわかりやすい。
「オレがここのオーナーのブラウン・ガーナーだ。よろしくな」
 ミスター・ガーナー、と呼ぼうとするとブラウンでいいと言われたが、慣れ合うつもりもないアーサーはそれを無視した。
「こちらこそ、これからしばらく世話になる、ミスター・ガーナー」
 ブラウンは呆れたような視線を息子に送るが、ガーナーは(我慢してくれ)と言わんばかりに肩をすくめて見せた。
「あんたに住んでもらうのはここの五階になる。室内は今あんたが見たようにここと同じ造りになってる。家具は最低限そろってるから安心していい」
 何か質問は?というように手を広げられて、アーサーは一番の懸念を口にする。
「家賃はどうすればいい?今手持ちの現金がない」
 財布の中にはわずかなポンド札とプラチナランクのキャッシュカードしか入っていない。アーサーがそう言うと、ガーナーが笑う。
「ああ、そうそう。財布は没収な。家賃は自分で働いて稼ぐんだ」
「…何?」
「親父にはお前の事情も話してある。だから一括で払わなくてもいいことにしてもらっている」
 まったく話の読めないアーサーには、ガーナーの言葉も理解出来ない。怪訝な顔のアーサーに、ガーナーは己の説明不足を棚に上げてやれやれと話し始める。
「あんたには明日から日雇いの仕事をしてもらう。毎日仕事が終わると100ドルの給料が貰える。あんたはその給料から50ドルを親父に払う。その代わりあんたが仕事をさぼって働かなかったりして家賃を払えなくなったら、その時は即退去になる。そうなったらあんたは路頭に迷うことになるな」
 日曜日はその限りではないこと、自分の名前を名乗らないこと、身の回りのことは自分自身ですること、等のルールが伝えられ、アーサーはそのあまりの馬鹿馬鹿しさに再び声を荒げた。
「私に日雇いの仕事をさせるというのか?お前はどこまで私を貶めれば気が済むんだ。こんなことをして楽しいか?私にこれ以上ない屈辱を与えて、お前は満足か!?」
 目を血走らせて怒鳴り散らすアーサーに、それまで沈黙していたブラウンが一喝した。
「黙れ、このチキン野郎が!!」
 あまりの罵倒に怒りよりも驚きでアーサーが口を閉ざす。
「この辺りの人間にゃ、日当100ドルなんて破格だ。それをあんたに紹介してやったんだ。それだけでも感謝してもらいたいくらいだね」
「ハッ、押しつけがましい。だれがこんな仕事したいものか」
「じゃあ、好きなようにしろ。金を払わん限り、あの部屋には住ません。あと一か月路頭に迷い、段ボールにでもくるまって人の慈悲にでも縋るがいい」
「何を…!?」
 早くもここに来た事を後悔し始めていた。そもそもガーナーの言うなりになったこと自体が間違いだったのだと気付く。しかし、今になって昨日はアルコールの所為で判断力が鈍っていたのだと言ってもそれはただの言い訳に過ぎない。それに先程などはアパートの前でガーナーに対し、受けて立つ旨を伝えたのだ。今更前言を撤回することなどできない。それに、ここで怯めばブラウンの言った「チキン野郎」という言葉を肯定することにもなりかねない。
 まんまと親子二人がかりで心理戦で絡めとられていることにも気付かず、アーサーはその条件を飲むことにしたのだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act7

►2008/05/14 20:00 

>> ReadMore
 散々不満を言い募り、こんな馬鹿げたことは納得できないと主張したが、結局アーサーはガーナー親子にいいように言いくるめられて、この話を呑むしかなかった。これがアルコール依存症の治療に関係があるとはどうしても思えないアーサーは、あの二人が自分を貶めて楽しんでいるとしか思えなかった。
 案内された部屋には確かに家具もあり、生活するために必要なものが最低限揃っているようだった。しかしそのどれもがアーサーの部屋にあったような最先端の機器ではなく、使い方も分からないような旧式のものばかりで、それを見ただけでアーサーの気分はひどく滅入った。
 明日からどうすればいいというのだろう。財布もカードも取り上げられてしまった今、パスポートなどあってもイギリスに帰ることすらできない。こんな扱いでは強制的に労働させられそうになっていると警察に訴えれば犯罪として成り立ちそうな気さえする。しかし、そんなことをすれば自分の名前が公になることは必至で、メディアはそれを面白おかしく書き立てるに決まっている。警察に駆け込むことは自ら彼らにネタを提供しているのと同じで、プライドの高いアーサーにはメディアに自分の名前を蹂躙されることが許せなかった。
 四年前、レイとの関係が世間に明らかにされてしまった時の屈辱を今でもアーサーは忘れることができない。ギルフォード家の権力をもってしても握り潰すことのできなかったあの騒動は、アーサーの矜持に深く禍根を残した。レイの心が自分から離れてしまう根本の原因になったのも全てその所為だとアーサーは思っている。あの時、民衆がレイを一斉にバッシングするようなことがなければ、レイはずっと自分の傍にいてくれたはずだったのだ。レイはその非難を一身に受け、あまつさえ卵をぶつけられるということもあった。あの時から、全てが狂い始めたのだと思うとアーサーの心はプロレタリアートへの憎しみでいっぱいになった。あんなことさえなければレイも、自身の地位も名誉も失うこともなかっただろうにと思えば腹立たしい。
 


 そんなことを考えながら何もない部屋で過ごしていると、窓からの光が徐々に弱くなってきていることに気づく。もう時刻は夕方に差し掛かっていた。アルコールの切れた身体はもう限界で、喉が渇いて仕方無かったが、この部屋に酒が置いてあるはずもない。酒を買う金もないアーサーはひたすらその渇きを堪えるしかなかった。
 酒を口にすることのできない苛立ちは、ガーナー親子と、自分をこのような境遇に貶めた『IBC』の役員たち、レイを罵ったパパラッチ達に向かった。そしてこのような運命に自分を陥れた神を呪った。どうして自分だけがこんな目に合わなければならないのかと大声で叫び出したい気分になった。
 陰鬱な空気の籠る部屋が忌々しくて、窓を開け放つ。
「クソ………ッ!!」
 何度もこぶしを窓枠に打ちつけて怒りをぶつける。そんなことをしてもどうにもならないとわかっていても、身の内に蟠る鬱々とした怒りをどこかにぶつけないと今にも発狂してしまいそうだった。
 悔しい。どうしてこの自分が、華々しい将来を約束されていたはずの自分がこんな卑しい身分にまで堕ちてしまったのだろう。何よりも、自分自身がどうしようもなく堕落してしまっていることが一番悔しい。こんな状況に陥ってしまった今、真っ先にどう逃亡しようかと考えていた自分が一番悔しかった。
 一か月とはいえ、貴族として生きてきた自分がいきなりこんな環境に放り込まれて生活していける自信などなかった。金がないという状況を体験したこともなかったアーサーには、これからの一か月をどうやって過ごせばいいのか全く見当がつかない。
「クソ…」
 こぶしから血が滲んでいることにも気付かず、アーサーは窓辺で途方に暮れていた。オレンジ色の光が自分を照らすが、それすらもアーサーの気分を忌々しくさせた。
 そんな時である。窓際でうなだれるアーサーに、女の声が聞こえてきた。
「ハーイ!あなた新入りさん?」
 明るい女の声に、アーサーは一体何だと声の発生源に目をやる。ちょうどアーサーの真下の窓から、黒い髪の女が顔を出していた。身を乗り出してアーサーを見上げる女は朗らかな笑顔を浮かべてアーサーが言葉を返してくれるのを待っている。
「そうだ」
 ぶっきらぼうにそう返し、アーサーは黙り込む。
 若いその女は東洋人のようだった。くせが強いイントネーションから中国系と思われた。
「私はメイファン。ここに子供と住んでるの。うるさくしちゃうと思うけどよろしくね」
 うるさいと言えば今がそうなのだが、メイファンに悪い印象を持てないのは彼女の笑顔が自分の想い人に似ている所為だとアーサーは気づく。容姿の特徴は全く似ていないが、控え目で裏のない笑顔は否応なくレイを思い出させる。
「夕食は食べた?もしよかったら、一緒にどうかしら?」
 いきなりの誘いにアーサーは驚きを隠せない。いくらなんでも初対面の人間を家に招くというのは警戒心がなさすぎるのではないだろうか。そう思っていると、メイファンがその訳を明かしてくれた。
「ガーナーさんからあなたのこと頼まれてるのよ。色々世話してやってくれって。ご飯、まだなんでしょ?」
 これは彼女の親切心からではないらしい。そうわかって一気に苛立ちが再沸した。父親のガーナーが余計な気を回してくれたらしいとわかって、腹が立った。
「いらない」
 余計な御世話だとも言い加えたかったが、女性にそこまで暴言を吐くことも躊躇われてそれはのみこんだ。怒りの所為で忘れていたが、朝食を食べてから一切何も口にしていないアーサーは確かに腹が減っていた。
 するとメイファンは笑顔のままで怒ったような口調で言う。
「いいからいらっしゃい。ママの言うことは聞くものよ」
 どう見ても年下にしか見えないメイファンにそんな風に言われて、アーサーは思わず苦笑する。どうやら言う通りにするしかなさそうだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます♪お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act8

►2008/05/15 20:00 

>> ReadMore
 アーサーは階下の部屋を訪れ、朗らかな笑顔を浮かべるメイファンに快く迎えられた。
 生活感の漂う部屋に通されるとそこには、まだ未就学だろう年頃の少年がいて、見慣れぬ訪問者に警戒心を顕わにした目を向けていた。混血児らしく、茶色の髪と目や顔つきに欧米人の特徴が表れていた。
「この子はローラン。私の大事な一人息子よ。…あ、ごめんなさい、あなたのお名前を聞くのを忘れてたわ」
 メイファンのその言葉で、ブラウンが自分のことを全て彼女に伝えているわけではないことを知った。おそらく彼女は目の前の男がアーサー・ギルフォードであることを知らない。
「こちらこそ失礼した。私はディック・クライヴ。今日からこの上に住むことになった。よろしく」
 ディック・クライヴ。それがこの先一か月間のアーサーの名前だ。髪を黒く染めただけとはいえ、こうもやつれてしまっては今のアーサーを、あのアーサー・ギルフォードだと見抜ける人間はいないだろう。
「よろしく、ディック。私のことはメイファンと呼んでね」
 お互いに紹介し合い、そこでふとアーサーは父親の陰がないことに気づく。室内を見渡してもそれらしい人物はおらず、そもそもこの部屋には男が住んでいる気配がない。アーサーがそんな疑問を持っていることに気づいたのか、メイファンが笑って言う。
「この子の父親とは結婚していないの。だからここには私とこの子の二人だけ」
 たまに金をせびりにくるけどね、と笑いながら話すメイファンはそんな苦労を感じさせない明るさがあった。物価の高いNYで女手一つで子供を育てるのはかなり困難なはずだ。しかし、目の前のメイファンからはそういった苦しさを微塵も感じない。
 気にしないで、と彼女は言う。アーサーは自分が余程痛ましい表情をしていたのだろうと、自分を戒めた。同情など、そんな安っぽい感情は捨てなければならない。低所得者の彼らに情けをかけてもキリがない。きっとこの辺りに住んでいる人間たちは皆、ろくでもない人生を歩んでいる人間たちに違いないのだから。
「ここに座って。ご飯、すぐ用意するから」
 そう言われてアーサーは粗末なテーブルセットに腰をかける。座ったとたんに軋んだ音がし、足が折れるのではないかと不安になった。
 手際よく料理を始めるメイファンに、アーサーが話しかける。
「ミスター・ガーナーから私のことを頼まれたというのはどういうことだ?」
 なぜメイファンにそんなことを頼んだのか疑問だった。まさか自分がアーサー・ギルフォードだということは話していないだろうが、彼女がどれだけの情報を得ているかによっては会話の内容が違ってくる。
「どうせあなたは食事なんて作れないでしょうから、少し面倒をみてやれって言われたの。…これはあなたには言うなって言われたけど、少しだけお駄賃もらったのよ。私失業中だから助かったわ」
「…そうか」
 確かに、今日メイファンに声を掛けられなければ夕食を食いはぐれるところだった。しかし、ブラウンにそこまで面倒見られなくてもそのうち何とかするはずだったと、彼の親切心を否定した。
「ニュージャージーにある繊維工場で働いてたの。でも、リストラになっちゃって。今、仕事探してるところなの」
 彼女のような外国人労働者などは真っ先にリストラ対象になってしまうだろうと容易に想像できた。『IBC』でも先ごろこの経営不振に伴って、採算の合わない工場の閉鎖や大規模なリストラを行った。この世界的な不景気に見舞われている昨今、こんな話は珍しくない。
 彼女は自分の身の上を簡潔に話しながら、てきぱきと料理を作った。食卓に夕食が並ぶ頃には、アーサーも彼女について一通り知ることになった。
 メイファンは、アーサーより二歳年下の28歳。もっと若く見えたが、やはりレイを引き合いに出すまでもなく、東洋人は年齢よりも若く見えるらしい。NYに来たのは八年前で、中国では結構有名な女優だったのだという。
「ハリウッドスターになりたかったの」
 そう言ってメイファンは苦い笑みを浮かべた。
 …俳優協会に登録しなければならない。それには多額の寄付が必要なのだと、そんな言葉に騙されて有り金を全部取られてしまったという。母国の人間には大見栄をきって飛び出してきた手前、成功するまで帰れないと思ったメイファンは、バイトをしながらオーディションを受け続けたがことごとく落とされてしまったらしい。そんな時、つき合っていた男との間に子供ができてしまい、それを期にきっぱりと女優への道を諦めたという。
「でも私、今の方がずっと幸せよ。もし、女優になっていたとしてもこの子と暮らす幸せに比べたらちっぽけなものね」
 そう言ってローランを抱きしめるメイファンの表情は心底幸せそうで、その言葉が決して負け惜しみなどではないことが伝わってくる。
 自分ならどうだっただろう。もし、レイと『IBC』を天秤にかけなければならないとしたら自分はどちらを選んでいただろうか。四年前その選択肢を迫られ、二つとも取ろうとして、結局は二つとも逃してしまった自分は愚かだったのだろうか。あの時自分はどうすべきだったのか。
 メイファンの心から満たされた笑顔に、自分の心に空いた空洞を改めて自覚させられ、無常感を覚えたアーサーだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act9

►2008/05/16 20:00 

>> ReadMore
 目覚めると、すでに外は明るくなっていた。どうやらもう昼間のようだと、二日酔いでひどく痛む頭を抱えてベッドの上で寝がえりをうつ。
 昨日はメイファンの家で夕食を摂ったが、どうしてもアルコールが欲しくなりメイファンに頼んで料理用だという紹興酒を飲ませてもらった。一杯だけという約束だったがそんな量でアーサーが満足できるわけがなく、結局あるだけの酒を飲み干してしまった。
 かなりアルコール度数がきつかったのと、飲みなれない種類の酒だったのがまずかったのか、見事にこうして二日酔いになってしまったのである。
 …しかし。
(そういえば、今日から仕事だったな…)
 朝早いからあまり飲み過ぎないでねとメイファンに何度も注意されていたが、案の定寝過してしまったようだ。時計を確認すると、すでに午後をまわっていた。
 今から行っても手遅れなのは明白で、もとより働く気などなかったアーサーは、今日ばかりは大目に見てもらおうと二度寝の体勢に入った。
 夕方、乱暴にドアを叩く音がして目が覚めた。気だるい身体を怠慢な動きでどうにか起こして玄関に向かう。ドアの外に立っていたのはブラウンだった。
「いい御身分だな。寝ていたのか」
 開口一番にそう指摘されて、寝起きの不機嫌さが更にいや増す。
「だから何だ」
 心地よい午睡を邪魔されて、アーサーは不愉快極まりないとブラウンを睨みかえす。そんなアーサーをブラウンは鼻で笑った。
「仕事に行かなかったそうじゃないか。金はあるのか?」
 言われて昨日交わした約束を思い出したが、そんな金がアーサーにあるはずもない。言葉に詰まったアーサーに、ブラウンは非情にも退去通告を出す。
「じゃあ、約束通り出て行ってくれ。契約を守れないヤツの面倒など見きれん」
 今すぐにでも出て行けと言わんばかりに仁王立ちになったブラウンに怒りが込み上げる。勝手に押し付けた約束を守れなかったからといって、この扱いはあまりにも横暴すぎる。
「ここでは働かない者は生きていく資格はない」
「メイファンだって働いてないだろう」
 アーサーの屁理屈にブラウンは口元を歪めて笑う。
「誰のせいだと思っているんだ。メイファンの働いていた工場は『IBC』資本の工場だぞ」
「何…?」
 経営不振に伴い、アーサーが執った策とは工賃の高い地域の大規模なリストラや工場の閉鎖だった。中国や他のアジア地域に比べて、欧米の人件費は10倍以上の差がある。アーサーとて安易な考えでリストラ政策を執ったわけではないのだ。
「というわけで、ここら辺にはお前を恨んでいる輩が大勢いる。せいぜいバレないように物乞いすることだな」
 ブラウンは本気で自分をここから追い出すつもりらしい。
「わかった。明日払う、それでいいだろう」
「ダメだ。今日からだと言っただろう」
 一歩も引くつもりもないらしいブラウンに、アーサーは苛立ちを募らせる。融通の利かない頑固っぷりは、アーサーへの個人的な恨みもこもっている気がする。
「私にどうしろと言うんだ」
「お前が決めろ。路上生活者になり物乞いをするか、誰かに50ドルを借りるか」
「何だと…」
 昨日ここへ来たばかりで頼れる人間などメイファンしかいない。それを承知の上でつまりブラウンは、メイファンに金を借りてこいと言っているのだ。
「そんなこと、できるはずがない」
 失業中のメイファンに人に金を都合できるほどの余裕があるとは思えない。しかし、今金を払わなければブラウンはアーサーを容赦なくここから追い出すつもりなのだろう。
「お前はNYの路上生活者を見たことがあるか。あれはな、道行く人から金を恵んでもらう代わりに人としてのプライドを捨てていくんだ。果たしてお前にそんな真似ができるかな?」
 アーサーは忌々しい気持ちでブラウンを押しのけると階下のメイファンの部屋に向かう。呼び鈴に応えて顔を出したメイファンにアーサーは屈辱の言葉を口にする。
「すまない…。50ドルを貸してもらえないか」
 プライドの高いアーサーに路上生活などできるはずもない。やっていることに大差はないが、これが最初で最後だと思えば我慢できる。
「50ドル…?え〜と、ちょっと待ってちょうだい」
 部屋に戻ったメイファンは財布を持って現れた。
「50ドル…。よかった、ちょうどあったわ」
 財布の札入れには50ドルきりしか入っていなかった。それでもメイファンはその50ドルを貸してくれるという。
「本当にすまない。明日、必ず返す」
 心からメイファンへの謝罪の気持ちでいっぱいになり、明日は何としても働かなければならないと悔恨したアーサーだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

Je te veux 〜after Arthur〜 act10

►2008/05/22 20:00 

>> ReadMore
 次の日アーサーは、仕事の時間に間に合うように起床した。
 今日ばかりは仕事をサボタージュするわけにいかない理由を持つアーサーにとっては切実だった。昨日のメイファンの複雑な笑顔を思えば、たとえアーサーがガーナー親子に反感を持っていたとしても働かないわけにはいかなかった。
 借金などという屈辱的な行為をアーサーは初めて体験した。期せずして体験してしまったそれはアーサーに非常に気まずい思いをさせた。明日食べるものさえ心配しなければならない家族からなけなしの金を借りるなど、決してあってはならないことだと流石のアーサーも反省していた。メイファンに借りた金を返すためにも、二度とメイファンに迷惑をかけないためにも今日は絶対に働いて給金を貰わなくてはならないのだ。
 指定された場所に時間通りにやってきたアーサーは厳つい男達で箱詰めのマイクロバスに乗せられ、市街地まで移動した。その中のリーダー格の男に案内されて、アーサーは男達と共に粗末なビルの中へと入っていく。
 仕事の内容について何も訊いていなかったアーサーは、男たちの醸し出す雰囲気から何か嫌な予感を感じ取っていた。周りを見渡せばどれも体格のいい男ばかりで、どう考えても肉体労働者にしか見えない。まさか今からこのむさ苦しい男達と一緒に肉体労働に汗を流せとでも言うつもりなのかと恐々とした気分になる。
 ロッカーの並ぶ部屋に通されてアーサーは服のサイズを訊かれる。作業服に着替えるのだと言われて、ますます予想が的を得ていることを確信する。
「どんな仕事なんだ?私は何も聞いていないのだが」
 アーサーがそう言うと、男は今更何を、という顔になりぞんざいな口ぶりで言う。
「オレ達は土木作業員だ。それ以上でもそれ以下でもない」
 それを聞いてアーサーはやはり、という思いと、なぜ自分がそんな仕事に従事しなければならないという憤りで顔を嫌悪に歪めた。それを見た男はフンと鼻で笑い、アーサーに背を向ける。
「嫌なら今すぐ帰ってもいいんだぜ。あんた、育ちがよさそうだもんな。働いたこともなさそうなお綺麗な手をしてやがる。ここはあんたみたいな人間が来る場所じゃねぇよ、さっさと消えな、坊っちゃん」
 男の言葉にその場にいた何人かがせせら笑う。訛りのきつい集団の中にいてはアーサーの正しく美しいクイーンズイングリッシュは逆に悪目立ちしていた。
 アーサーとて好き好んでこの場所にいるわけではない。帰れるものなら帰りたい。しかしメイファンの顔が頭に浮かび、帰ろうとする足を思いとどまらせた。
「…帰るつもりはない。つべこべ言わず、さっさと早く作業服をくれ」
 高圧的な物言いでそう言うと、男は半笑いを浮かべてアーサーを見やる。舐められるものかとアーサーが睨みつけると、二人の間に緊迫した空気が流れた。しばらく視線を合わせたままそうしていると、男は突然弾けたように笑いだした。馬鹿にされた気がしてアーサーが内心ムッとしていると、男はアーサーの背中を二度三度叩いて握手を求めてきた。
「お前、面白いヤツだな。オレはジュリオ・カザーイ。お前は?」
 握手に応えながら名乗ろうとしてハッと口を閉ざす。思わずアーサー・ギルフォードだと名乗るところだった。
「…ディック・クライブだ」
「ディックか、よろしくな。…みんな聞け!この生意気な新人はディックっていうんだそうだ。仲良くしてやれよ」
 様子をうかがっていた男達が一斉に返事をかえしてくる。
 リーダーのジュリオがアーサーの存在を認めたことで、その他の男たちもアーサーを認めてくれたらしい。先ほどまでの張りつめた空気が消え、アーサーは少しホッとする。おそらく、このジュリオという男に嫌われていたらこれからの一か月は非常に仕事がしづらい環境になっていたに違いないと想像できた。
 とはいっても、アーサーに肉体労働への拒絶があることは変わらない。『IBC』にいたときも多忙ではあったが、ほとんどデスクワークが主だったため汗水流して働いた経験などない。汗を流すといっても、肉体を維持するために週に何度かスポーツクラブに通っていた程度で、それもこの三か月間の怠慢な生活の所為ですっかり筋肉も体力も落ちてしまっている。
 第一に、このような身体が汚れるような仕事に潔癖症のきらいがあるアーサーは嫌悪感を持っている。
(しかし、メイファンが…)
 子供を抱えて懸命に生きているメイファンに好意を持っているアーサーを労働へと向かわせたのは、彼女に報いたいというその気持ちだけだった。


 こうして前途多難なアーサーのワークデイズが幕を上げたのであった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Je te veux 〜after Arthur〜 | Comment(0) | Top ▲

 | Blog Top |  Next»»

ブログ内検索


RSSフィード

  • 最新記事のRSS
  • 最新コメントのRSS
  • 最新トラックバックのRSS

リンク

  • 星歐花様:「小悪魔&天使のウェーブ☆」
  • 古田様:「月夜の晩に…」
  • 古田様:「星降る夜に…」
  • 日向夏姫様:「DRAGON GATE」
  • 遠麗様:「BL Break 100%」
  • 遠麗様:「BL Daybreak」
  • ジェイムス李様:「Masquerade」
  • バクテリア王国談話室
  • Chaos Paradise R18様
  • BL☆Search様
  • FC2カウンター

    現在の閲覧者数:

    ブログ村ランキング

    にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

    WEB拍手

    素材WEB拍手

    ガンダム名言録

    うちのコです。

    By FC2ブログ

    今すぐブログを作ろう!

    Powered By FC2ブログ

Template Designed by *Essence. Material by web material *Essence.
ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校