恐怖のバクテリア〜バクテリア王国へようこそ〜

御厨鈴音(みくりやれおん)が勝手に作り上げた恐れるにたらぬ王国。小説とも呼べない駄文ばかりですので、読むときっと後悔します。そんなの嫌だ、という方と18歳未満の方、BLという二文字に嫌悪を感じる方は今すぐお逃げ下さい。
07≪ 2008/08/ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫09

プロフィール

御厨 鈴音

Author:御厨 鈴音
好:ガンダムSEED、00、BL、チョコ
嫌:争いごと、魚卵、カニ
属:主腐。

最近の記事

  • 恐怖のバクテリア〜バクテリア王国へようこそ〜 (08/09)
  • The last love word act21 (08/08)
  • The last love word act20 (08/06)
  • The last love word act19 (08/04)
  • The last love word act18 (08/01)

最近のコメント

  • れおん:The last love word act13 (07/26)
  • 遠麗:The last love word act13 (07/24)
  • れおん:Perfect Love act33 (完結) (07/18)
  • シャンパンG:Perfect Love act33 (完結) (07/18)
  • れおん:Je te veux 〜after Arthur〜 act30 (完結) (06/25)

月別アーカイブ

  • 2009年08月 (1)
  • 2008年08月 (4)
  • 2008年07月 (13)
  • 2008年06月 (40)
  • 2008年05月 (28)
  • 2008年04月 (27)
  • 2008年03月 (12)
  • 2008年02月 (16)
  • 2008年01月 (8)
  • 2007年12月 (11)
  • 2007年11月 (25)
  • 2007年10月 (31)
  • 2007年09月 (31)
  • 2007年08月 (35)

カテゴリ

  • The last love word (21)
  • Je te veux 〜after Arthur〜 (30)
  • Stories 〜before Reiji〜 (31)
  • Sweet Bitter Chocolate(完結) (34)
  • Crush on You(完結) (10)
  • Love Paradox(完結) (32)
  • You are my shining star(完結) (22)
  • Primrose Way (完結) (31)
  • In the name of love (完結) (30)
  • Perfect Love(完結) (33)
  • 今日のつぶやき (2)
  • ショートストーリー (6)

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Sweet Bitter Chocolate act1

►2008/03/25 20:00 

>> ReadMore
 ミュージシャン荻久保玲人の素顔を知る者は、業界でも数少ない。
 しかし、一度でも会った人間なら、例外なく彼に好印象を持つようだった。
「思っていたより気さくでいい人だよ」
 というのが彼らの一致した感想である。
 荻久保玲人には残念ながら悪い噂が絶えないが、そういったものは一度も会ったことない人間が広めているのかもしれない。
「アイツって、ワガママっぽくない?」
 誰かが何気なく発したその一言が、「ワガママらしいよ」に変わり「ワガママだ」に確定されてしまうのは、伝言ゲームの例を示すべくもない噂というものの特性なのだろう。
 二月から荻久保玲人のマネージャーを務めることになった徳島美智(とくしまみち)も、そんな数々の噂に不安を抱いていた。
 この仕事が決まり、まず一番にそれを知らせた母も心配そうであった。
『大丈夫なの?だってあの人って…』
 …ホモなんでしょ?
 母が思わず声をひそめたくなる理由も分からないわけではない。この時代、同性愛者がそう珍しくもなくなってきているとはいえ、まだまだ美智の母くらいの年代の人間には受け入れ難いものなのだろう。美智本人としては、自分がそういった性愛の対象にならないことが逆に安心材料であった。
 美智が以前担当していたタレントは好色なことで有名な元アイドルで、美智はその堅物な性格を買われて彼のマネージメントを任された。決して器量の悪くない美智が彼の餌食にならなかったのは、ひとえに美智の頑なな拒絶があったせいだったが、その代わり彼は美智を使い走りのように扱った。コーヒーが飲みたいと言えば近くのカフェでテイクアウトをし、マンダリンが飲みたかったのにと言われれば買い直しにまたカフェに走った。そんな扱いを受けても不平も言わず耐えてきた美智だったが、ある日突然気まぐれに解雇されてしまった。
『お前、真面目すぎてつまんねぇんだよ』
 というのが、その理由だった。
 厳格な家庭で育ち、そういう風にしか生きれなかった美智はそんな言葉を投げつけられることにも慣れていた。美智が最も忌むべきものとしているのは、ふしだら・不真面目・不誠実で、その見本市のような男に何を言われても傷ついたりしない。逆に、その任を解かれて清々しているくらいだ。
 そんな経験のある美智なので、個人的な性癖の一つや二つはどうということはない。問題なのはやはり玲人本人の性格だろう。
 新年の慌ただしさもすっかり落ち着いた二月の始め、美智は指定されたビルのフロアに指定よりも10分早く到着していた。そこは荻久保玲人のレコーディングスタジオで、美智は今日初めて玲人と対面し仕事内容の説明や軽い面談を行うことになっている。
 まだ時間前だからなのかフロアには誰もおらず、休憩用のソファとベンディングがある以外はガランとしている。ドアは三つあり、そのうちの一つに『Now Recording』というプレートが掛けられていることから、そこがスタジオであり、今はその最中なのだとわかった。取り込み中と判断した美智は立ったまま人が通るのを待っていたが、予定の時間を過ぎても人が出てくる気配がない。どうしたものかと悩んでいると、スタジオから立派な体格をした男が姿を現した。まるで悪役レスラーのような男の圧倒的な存在感に美智が怯んでいると、男の方から美智に声をかけてきた。
「もしかして、新しいマネージャーさん?」
「あ、はい。今日から荻久保玲人のマネージャーを務めさせていただきます徳島美智と申します」
 形通りの挨拶の後、名刺を手渡そうとすと男は手を振って、
「ああ、いいから」 
 と、受け取りを断った。
「俺なんかにくれても紙がもったいないだけだ。…俺は大門(おおも)。よろしくな、徳島さん」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
 大門は鷹揚に頷いて見せると、美智にソファに座るように勧めた。
 前歴の所為でもなく、男性恐怖症の気がある美智は緊張を顔に出さぬようにソファに腰かけた。特に大門のようにフランクに話しかけてくる男性に苦手意識を持っていた。仕事で関わり合いになるのならビジネスライクな距離感が一番楽だ。打ち明け話などされて、他人の生々しい一面を見せつけられるのが美智は苦手だった。
「今、玲人はちょっと手が放せねぇんだ。茶でも飲みながら待っててくれ」
 大門はそう言って、ポケットをジャラジャラいわせて小銭を取り出した。
「何がいい?」
 どうやら奢ってくれるつもりらしい大門に、美智は慌てて、
「いいえ、結構ですから」
 と遠慮したが、大門はニヤリと笑って、
「いいって。今日だけだから」
 冗談めかしてそう言われて、美智は断れなくなった。
 見た目は怖いが悪い人間ではなさそうだ。ブラックコーヒーの入った紙コップを受け取りながら美智はそう判断した。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪


 【言い訳】

間が空いて申し訳ないです。中途半端なところで終わってしまって申し訳ないです。主人公が出てこない小説で申し訳ないです…。


Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act2

►2008/03/26 20:00 

>> ReadMore
「お忙しそうですね」
 美智がそう言うと大門は「ああ」と頷いてみせた。
「今は特にな。シエラのセカンドアルバムを作ってる最中だから余計忙しいんだ」
 煙草吸っていいか、と問われ、美智は「どうぞ」と灰皿を差し出した。
「年末の忙しい時期に前のマネージャーが辞めちまってな。それから俺がやってたんだ。ったく、スタジオミュージシャンを何だと思ってんだか」
 本来はギタリストだという大門は玲人とは近しい関係らしい。言葉の端々からそれが窺えるが、まさか大門が玲人の恋人ということはないだろうかと、美智でさえも勘繰りたくなる。
 不埒な想像をしてしまいそうになった頭を切り替えて、美智は当初の懸念について質問することにした。「お聞きしてもよろしいですか」と前置きして美智は言った。
「前任の方はどうしてお辞めになったんでしょうか?」
 辞めた理由が玲人にあるのなら美智も相応の覚悟をしなければならない。大門は煙草の煙を吐き出しながら、苦い表情になる。それは一概に煙草の所為でもないようだった。
「玲人のマネージャーは長続きしねぇんだわ」
 美智はやはり…、と少なからず落胆した。玲人が意外に「気さく」で「いい人」というのは偏った情報だったのかもしれない。しかし大門は煙草の灰を灰皿に落としながら言葉を続けた。
「帰国してから三年経つけどな。その間に四人変わった。あんたで五人目か。最初の奴は国立大卒のエリート君だった」
 フーっと長く紫煙を吐き出して、遠くに視線を飛ばした大門を美智はじっと見つめる。単純に計算すれば一人あたり一年も続いていない。そうなってしまった理由が玲人にはあるというのだろうか。
「玲人はあの顔だろう。勉強一筋で恋愛経験もないガリ勉君がよ、一日中あんなのと一緒にいたら、まぁ、しょうがねぇっちゃあしょうがねぇがな」
 大門は濁すような言い方をしたが、玲人と彼の間に何が起きたのかは想像に難くない。確かに玲人の容姿はどちらかといえば女性よりも男性にうったえるものがある。美智も恋愛経験が豊富とは言えず、その男の気持ちを推し量ることなどできないが、そうなってしまっても仕方のない美貌だというのは理解できる。
「そんな感じで三人辞めてった。色ボケで仕事に支障が出始めるからな、仕方ねぇ。…でも最後の奴はちょっと違う」
 どうやら玲人のマネージャーが次々と辞めていった理由は、玲人の所為ではあってもその性格によるものではないらしい。わずかな安堵と、大門が言う「最後のマネージャー」のことが気になって、美智は話の続きを待つ。
「玲人に心酔してるって点では同じだったんだが、それが行き過ぎてた。どんどんエスカレートしていってな、玲人の私生活にまで口を挟むようになった。玲人は我慢したさ。でも玲人の恋人に『別れろ』って電話したらしくってな。玲人がついにキレてクビにした」
 よくもった方だと大門は呟いて、煙草をもみ消した。そこには今語られた以上の何かがあったのだろうと想像できるが、それ以上尋ねることは躊躇われた。そこには人間の感情の生々しさが潜んでいるような気がしたからだ。玲人にそこまで入れ込んでしまった人々の気持ちは美智には理解できない。しかし、自分を見失ってまで誰かに執着するその執念が美智には怖ろしかった。
「まぁそういうことだからよ、仕事以外のことで玲人に口出ししないでやって欲しいんだ。仕事に差し障るようなら注意してもかまわねぇが」
「はい…」
「あいつ自身は悪いヤツじゃないんだぜ。ただちょっとヌケてるところがあるからそれをフォローしてやるのが俺達の務めだ。あいつは音楽以外のことはからっきし何もできねぇ。でも音楽に関しては間違いなく天才だ。だから俺達は音楽以外のことであいつを煩わせないようにそれらを請け負ってやる。それだけだ」
 言い方は乱暴だが大門が言いたいことは伝わった。そして大門がどれだけ玲人の才能を認め、尊敬しているのかも伝わってきた。大門は言い終わると少し恥ずかしそうに「まぁ、そういうことだ」と頭を掻く。
 美智はもう新しい雇用主について心配はしていなかった。大門が正しい見識の持ち主であることがわかった今、その大門に尊敬される玲人が悪い人間だとは思えなかった。
 それから大門から仕事の内容について説明を受けていると、レコーディングスタジオの扉が開き、そこからぞろぞろと疲れた顔をした男達が現れた。そして、最後に姿を見せた人物に美智の身体に緊張が走る。
 仕事柄、様々な著名人に会ってきたがこれほど鮮やかなオーラを持った人間を美智は他に知らない。美智が何も言えずただ玲人に見とれていると大門の方から玲人に声をかけてくれた。
「玲人、新しいマネージャーさん来てるぞ」
 大門はまるで子供に優しく諭すようにそう言うと、玲人は美智の目の前に立ち首を少し傾げて微笑んだ。それはまるでいち早く春が訪れたような華やかさで、美智は一瞬自失した。
「こんにちわ。よろしくおねがいしますね」
 少し子供っぽい、しかし優しさがにじみ出るような声でそう言われて、美智はここに来て本当によかったと心の底から思ったのであった。
「は、はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」
 この人を全力でサポートしていこう。そう心に決めた美智なのであった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます♪お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪


Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act3

►2008/03/27 20:00 

>> ReadMore
 新年の嵐のような忙しさも一段落ついた二月の始め、吾一は里村に呼ばれ、なぜか一万円札を手渡された。
「小遣いっすか?」
 目を輝かせた吾一に、里村はムッとしかめっ面になった。
「馬鹿野郎」
 唸るような低音で一蹴して、里村は気まずそうに咳払いをした。
 恋人の前では蕩けるように優しくなるのに吾一に対しては徹底的に冷たい。この優しさの十分の一でも優しくしてくれればいいのにと吾一は思う。
「あー…、あれだ。ほら、14日の。なんかあるだろう。それを買ってこい」
 どうやらバレンタインが近いのでチョコレートを買ってこい、ということらしい。
 れっきとした男である里村が誰にチョコを贈るつもりかなど、吾一は問わずとも推測ができた。今年の始め、ひょんなきっかけで知ってしまった里村の秘密の恋人は、たいそう可憐で美人ではあるが男である。しかも世界規模で有名なミュージシャンである彼は非常に多忙で、滅多に会うことがかなわないらしい。そんな恋人のために、恋人達のイベントであるバレンタインにチョコを贈りたいという気持ちは里村という人と形(なり)に似合わず健気だ。
 それにしても、こんなことを吾一に頼むというのは信頼されているのか、開き直ったのか、もしくはあの女の欲望うずまくチョコレート売り場に女に混じって買い求めたくないのか。いずれにせよ例の如く吾一に使い走りをさせようとしているのは明白で、遠まわしに惚気られている吾一としては面白くない。
「いいんですか、オレなんかが買ってきて。玲人さんがっかりするだろうなぁ。里村さんが自分で買ってきてくれたほうが玲人さんも喜ぶと思うんだけどなぁ」
 芝居がかった言い様に里村は吾一を睨みつけたが、里村に関しては百戦錬磨の吾一がその程度で動じるはずもない。結局里村は諦めたような嘆息を吐いて懐から財布を取り出す羽目になった。
「ほら。これでいいだろう」
 里村はもう一枚万札を取り出して吾一に突き出した。
「ええっ!いいんですか!?うわ〜、さすが里村さんは太っ腹だなぁ」
 玲人と交際しているという弱みを握られている里村は、最近上司の威厳を失いつつある。
 謙虚な言葉の割にそそくさと万札をポケットにしまう吾一を呆れたように見つめて、里村は言う。
「そこらへんの安いもん買ってくるんじゃねぇぞ」
「はいはい、わかってますよ。何かご指定のブランドありますか?」
「何だそのブランドっていうのは。…あれか、有名な……、ゴ…ゴルバチョフ…、だったか?」
 吾一には『ごるばちょふ』が何なのかはわからなかったが、里村の言いたかった名前は分かるから、思わず吹き出してしまった。
「あは!それを言うなら『ゴディバ』でしょう」
 吾一の突っ込みに、里村は恥ずかしさを押し隠したようなふてくされた表情になる。
「そう、それだ。それを一万円分買ってこい」
「そうすっか。でも最近はいろんな店ありますからね。銀座にあるショコラティエなんかも美味しいらしいですよ」
 さすがに吾一は女性関係が派手なだけあって、スイーツに関する情報に詳しかった。『ショコラティエ』が何たるかもわからない里村は全てを吾一に任せるしかない。
「お前の好きなようにしろ」
 本当は自分で買いに行くべきなのだろうが、甘いものを好まない里村はおそらく玲人の好むものをチョイスできないのではないかという懸念があった。吾一に頼むのは少なからず気恥ずかしいが正解だったと里村は思う。
「へいへい、了解しましたよ」
 不真面目な返事をして、早速吾一はチョコレートを買い求めに事務所を飛び出していった。
 甘いものの中でも特にチョコレートを好む玲人はきっと喜んでくれるに違いない。玲人の嬉しそうな笑みを想像して、思わず口元が弛んでしまう里村なのであった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪


Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act4

►2008/03/29 20:00 

>> ReadMore
 里村と吾一が務める寺内不動産には月に二、三度、小さな台風がやってくる。里村も吾一も、「彼女」の来訪を内心面倒だとは思っているのだが、立場上、それを口にすることなどできるはずもない。特に吾一などは、渋谷で女性をナンパしようと声をかけたところ、それが「彼女」だった、という前科があり、『バラされたくなければ言うことききなさい』と脅されている立場なので完全に頭が上がらない。
 二月も数日過ぎたある日、不意打ちで訪れた「彼女」の出現に、二人に緊張が走る。
「里村ぁ〜?元気でやってる〜?」
 若い女性の甲高い声が響くと、里村と吾一はほとんど同時にため息を吐いた。
 寺内不動産の社長令嬢、寺内百合花(てらうちゆりか)は今年二十歳になる生粋のお嬢様だ。一人娘で、蝶よ花よと育てられたためか、我の強い、我が儘なところのある少女である。里村は父親である寺内和成に若い頃から世話になっているため、百合花のことは産まれたときから知っている。百合花が幼い時には里村はよくおもちゃにされたものだが、年ごろになってからは会う機会も滅多になくなっていた。ところが最近、百合花はこの事務所に頻繁に顔を出すようになった。どういう意図かは分からないが、百合花が事務所に訪れることによって業務に支障をきたしているのはまぎれもない事実だった。
「あ〜、里村、おるんやったら返事くらいしてくれたってええやん」
「…お嬢さん」
「そのお嬢さんて言い方やめてってゆうてるやん。もうウチ、二十歳になるし『百合花』って呼んで」
「………」
「あ、ちょっと〜、吾一!飲みもんくらい出されへんの?気ぃ利かんな、お前も」
「…は、はい……」
 こんな風に、百合花が事務所に現れると全てが百合花ペースになってしまう。生まれながらにして女王様気質の百合花は周囲の人間をたちまちにして下僕にしてしまうようであった。
「なにこの、やっすい紅茶!…まあええわ。どうせティバックなんやろうけど、今度ええ茶葉買っとき」
 出された茶にも一言ケチをつけて、百合花はソファの上で足を組んだ。
「…で、今日は、何の御用で?」
 言い方によっては失礼になってしまう言葉を、里村は出来る限り百合花を刺激しないように努めながら言った。
「何の用って…。そんなん里村の顔見に来たに決まってるやん」
「………」
「ほんま、つれないわ〜里村は。ウチがこないにアプローチしてんのに、そんな言い方ないやん」
「からかうのはやめてください」
 百合花はよくこんな風に里村に気があるような言葉を口にする。里村としては娘ほども年の離れた百合花がそんなことを本気で言うとは考えられず、からかわれているとしか思えなかったが、いつも二人のやり取りをそばで聞いている吾一は百合香が本気なのを察していた。年齢の割に色恋沙汰にうとい里村は百合花の想いにはまったく気が付いていない…というより、そのような可能性について考えたことすらないようである。
「ところで里村。14日、空いてんの?」
 それまで傲慢に振舞っていた百合花が、少し躊躇いがちに言う。14日といえば、バレンタイン、女性が意中の男性に愛を告白する日だ。ついに百合花は里村に告白するつもりなのだろうかと、吾一は息を飲んで二人の様子をうかがっていた。
「いえ、14日は…。予定が入っています」
 当然、里村としてはその日は玲人と過ごすつもりでいた。吾一に頼んで買ってきたチョコレートを渡して、文字通りの甘い時間を過ごす予定である。
 しかし里村の言葉に百合花はとたんに色めき立った。
「里村、まさか女?女がおるん?」
「ええ、まぁ…」
 女ではないが恋人はいる。そこまで百合花に言うつもりはなかったが、そういう存在がいるということくらいは言っても構わない気がした。しかし、里村には恋人がいないと信じていた百合花は里村の言葉にいきり立った。
「そんなん聞いてない!いつの間にそんなん作っとったん!?ウチ、なんも聞いてへん!!」
「つい最近です。お嬢さんに言わなかったのは、悪かったと思いますが」
 おそらく本来ならば、このような個人的なことをいちいち報告する義務などないはずなのだが、あまりの百合花の剣幕に里村も押されてしまう。
 百合花は里村のデスクを力いっぱい手のひらで叩きつけると、身を乗り出して言った。
「いやや!そんなん認めへん!ウチはそんなん絶対に認めへんからな!!」
 癇癪を起したようにそう叫んで、百合花は事務所を飛び出していった。
 百合花の激昂の理由がわからない里村は、報告もなしに恋人をつくったことに腹が立ったのかと解釈したが、百合花の想いを知る吾一はこの後に起こる騒動をなんとなしに予感していたのであった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act5

►2008/03/31 20:00 

>> ReadMore
 それから数日後、百合花が事務所を訪れたのは、里村が外回りに出かけたのと入れ違いだった。まるで見計らったかのようなタイミングで訪れた百合花に、吾一はひどく嫌な予感がしていた。
 事務所に入るなり仁王立ちになり、どこからかき回してやろうかと辺りを見回す百合花に、吾一の背筋に戦慄が走った。
「ちょ…、お嬢さん、今日は里村さん、いませんよ…?」
 無駄とわかりつつ吾一は恐る恐るそう言ってみたが、百合花は吾一を歯牙にもかけない素振りで里村のデスクに向かった。里村の不在をいいことに、百合花は里村のプライバシーを暴こうというつもりらしい。机の上の書類などを引っかき回し始めた百合花に、さすがの吾一も見かねて制止を入れた。
「お、お嬢さん、それはちょっと…!」
 書類に触れたことが知れて後で怒られるのは吾一なのである。勘弁してくれと心の中で叫びながら、どうか玲人に繋がるような証拠が出てきませんようにと祈った。百合花は机の上ばかりか、引き出しの中身まで探りを入れたが、結局望んだようなものは出てこなかったようだ。
 安堵した吾一だったが、その矛先が今度は自分に向いたことに脅威を覚えた。
「なぁ、里村の女、知ってるんやろ?どんな女なん?」
「い、いや、どんなって…」
 知っているだけに、どう嘘をつくべきか迷ってしまう。まさか、相手があの荻久保玲人だなどとは口が裂けても言ってはならない。
「ウチより若い…ってことはないやろ?何歳なんやろ?顔は?ウチよりキレイ?」
「あ…と。えぇっと…。さぁ、どうなんすかね?あはは…」
 今更しらばっくれても遅いことはわかっていたが、この質問に正直に答えればきっと自分の命はない。特に、最後の質問は。
 百合花は、今どきの女性らしく目鼻立ちのくっきりとしたどちらかといえば派手な顔立ちの美人だったが、女性のメイクオフ後のリアルな現実を知る吾一には、それがメイクテクニックによる幻だということくらいわかっていた。長いまつ毛も、美しく整えられた眉毛も、アイラインで大きく見える瞳も、数々のメイクアイテムと彼女らの労力の賜物である。
 しかし、新年早々に見知ってしまった玲人の本物の美しさに、百合花が敵うはずもなかった。もちろん、里村が美貌だけで玲人と付き合っているとは思えないが、それで勝負をしようとすればその勝敗は明らかだった。
「何やねん、はっきり言わんかいな。どうせ、どこぞの商売女なんやろうけど、そんな年増に里村はやらへん。ウチのほうがピッチピチやん。なぁ?」
「はぁ…」
 追及の手が緩んだことに安心しきっていたために、そのあと百合花がとった行動にまで気を回していられなかった。百合花は「喉乾いた」と呟くと、冷蔵庫に手をかけた。吾一がその存在に気が付いたときにはもう手遅れであった。
「…ちょっと。何やねん、コレ」
 百合花の手にあるのは、里村に頼まれて吾一が買ってきたチョコレートの包装箱だった。いかにも高級感を漂わせるそれは、どうみても本命チョコにしか見えない。
 自宅に置いておくとたまに訪れる玲人に見られてしまう可能性があるため、事務所の冷蔵庫で保管していたのだが、それが仇になってしまうとは里村も思わなかっただろう。
「コレ、銀座の有名な店やんなぁ?女からもらったん?それにしては、早すぎちゃう?まだ一週間もあんのに…」
「い、いや…。それは、その…」
 焦りのために吾一の掌が変な汗で湿る。それが貰ったものではなく、これからあげるものだとは百合花は思いもしないだろうが、確かにこの時期にそんなものがあるのは不自然だ。
「それは、俺が貰ったんですよ…。当日には会えそうもないからって…」
 吾一がついた苦し紛れの嘘はいとも簡単に見破られてしまう。
「アホか。お前にこんな高い本命チョコやる女がいるわけないやん。ありえへん」
 確かにそうなのだが、あまりにも酷い言葉でそう決めつけられて、吾一は涙目である。
「ひ、ひどいっすよ、お嬢さん…」
「わかるわ、そんなもん」
 吐き捨てるようにそう言って、百合花はその口元にしたたかな笑みを浮かべる。
 含みのあるその微笑に、吾一の胃がざわりと騒ぎ、落ち着かない気分になった。
「…ふん。まあ、ええわ。こんなもんで負けたとも思わんし」
 事務所に乗り込んできた時の勢いから、チョコレートの箱を踏みつぶすくらいのことはするかと思われたのに、百合花は大人しくそれを冷蔵庫に戻した。それが吾一には逆に恐ろしく、不気味にすら感じられた。
「ウチが今日ここに来たこと、里村には言ったらあかんで。わかってるやろ?」
 暗に例のナンパのことをにおわせて、百合花は念を押した。
「は、はぁ…」
 ナンパしたことをばらされるよりも今はもっと怖いものがある気がして、吾一は嫌な予感を覚えるのだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



 
 
Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act6

►2008/04/01 20:00 

>> ReadMore
 連日のハードなレコーディング作業に、美智も、そして普段あまり疲れた様子を見せない玲人も疲労しているようだった。今日も午前中から仕事を始めて、結局終わったのは午前を過ぎたころだった。それも作業が一段落したからではなく、明日も午前から作業を始めなければならないため、仕方なく仕事を切り上げたという具合だ。
 以前の仕事に比べ格段に激務である上に、やっていることは大して変わらない使い走りのようなことばかりだったが、他人に命令されてするのと自分の意志でするのとでは全く違う。玲人のスケジュールを管理する他にこれといった仕事がない美智は、少しでも玲人や他のスタッフ達の役に立ちたいと、自ら率先して食事の手配や雑務を請け負うようになっていた。
 玲人のマネージメントを務めるようになってから二週間が過ぎようとする頃。美智は今までになく充実した毎日を送っていた。
「美智、今日は自宅に戻らないから」
 美智の運転するバンの後部座席から玲人が言って、美智は運転に意識を集中させたまま応える。
「はい、わかりました。どこへお送りすればいいですか?」
 玲人が地名と目印となる建物の名前を告げて、美智はその通りに車を走らせた。着いた場所は何の変哲もないマンションの前で、美智はそこが玲人の恋人の住居ではないかとおぼろげに推測した。
 車から降りた玲人がわずかに疲労を滲ませた笑顔を浮かべて美智に問う。
「美智は、この後も仕事?日報なんていいから、早く休んでね」
 以前に仕事の後は必ずその日一日の記録をつけるのだという美智の話に、玲人はしきりに感心していた。「真面目だね」と言われたが、性分なので仕方無い。こうして心配してくれることが嬉しくて、玲人の笑顔に疲れた身体が少し軽くなった気さえする。
「はい。玲人さんも今日はゆっくり休んで下さいね。明日は八時に、この場所でよろしいですか?」
「うん。ここの702号室だから。もし起きてこなかったら叩き起こしに来て」
「了解しました。では、お疲れさまでした」
「うん、美智もおつかれ!」
 明朗な笑顔で手を振る玲人に思わず美智も笑顔を誘われ、運転中にも関わらず手を振り返したくなってしまった。仕事から解放されて、今から恋人の元に向かう玲人の表情は先ほどまでの疲労感は微塵もない。恋愛に夢中になれず、仕事にばかり打ち込んできた美智だったが、玲人のあの幸せそうな笑顔を見ていると、あながち恋をするのも悪くない気がしてくるのだった。


『ごめんなさい。今日も行けそうにないです』
 そんなメールをもらって、里村は少なからず落胆していた。今日は玲人の為に料理をたくさん準備して待っていた。レコーディングが佳境に入り、玲人がとても多忙なのは里村も知っていたし、それを責めるつもりもないが、正月に二日休んだ後はほとんどまともに休暇のない玲人との逢瀬は間遠で、里村はじれったい思いをしていた。
 恋人に会えないというだけでこんなにも心許無い気分になったことなど過去になく、自分がこんなにも恋愛に夢中になれる人間なのだということをはじめて知った。
 あの時、玲人を手放したまま関係が終わっていたらと思うとゾッとする。玲人を傷付けたという罪悪感に苛まれ、二度と戻らない大きな存在を失った喪失感に耐えながら過ごしたクリスマス前の数日間は、今思えばまるで暗黒の日々だった。あのまま玲人が里村を救いに来てくれなければ、おそらくそう遠くない未来に廃人になっていただろうと本気で思う。
 きっと、あのバーで出会い、玲人の人となりを知った時から自分にとって彼は大きな存在になっていたのだと思う。それは今も変わることなく、それどころか玲人という存在は日々里村の中で大きくなっている。
 明日は14日、バレンタインである。明日は玲人に会えるのだろうかと不安を覚えながら、里村は早めの就寝に入ったのだった。


 身体をまさぐられているような感覚で里村は意識を覚醒させた。それでも目が覚めるまではいかず、しかもそれが玲人の手だということがなぜだか分かっていたので、里村は好きにさせていた。パジャマのシャツの上から筋肉の形を確かめるように、それでも里村の眠りを覚まさないようにと恐る恐る触れているのがわかる。少しくすぐったく、それでいて心地良いそれをいつまでも感じていたくて里村は気付かない振りをしていた。しかし玲人が背後で切なげに「はぁ〜」とため息をついたのを聞いて、思わず身体がピクリと反応してしまった。
「玲人さん…?」
「…う、うわっ!ご、ごめんなさい…!」
 たった今目が覚めたかのように里村が話し掛けると、玲人が慌てて身体を離した。玲人の温もりが消えて身体がひんやりと冷めていく感覚に里村は寂しさを感じる。玲人に抱きしめられていた心地よさが恋しくて、里村は玲人の腕を引き寄せてその身体を腕に抱き込んだ。
「どうしたんですか?」
「あ、あの、ごめん、勝手に入って…」
「いつでも来て構わないと言ったじゃないですか。だから鍵を渡したんです」
 玲人が過去のトラウマから夜一人で眠るのが苦手だという話は聞いていた。悪夢にうなされて深夜に目が覚めてしまうことがあると聞いて、里村はそういう時は電話をしてくれと言ったのだが玲人は気を使って電話をくれることはなかった。しまいには昔、シエラに数か月添い寝をしてもらったことがあると聞かされ、尋常でない焦りと嫉妬を覚えた。なぜ彼女は良くて自分では駄目なのだろうと、怒りさえ感じた。いっそのこと同棲してしまえば話は早いが、まだ付き合い始めて三か月にも満たない関係でそれを切り出すのは時期尚早と、里村は理由をつけて玲人に自宅マンションの鍵を渡したのだ。だから今日のような突然の訪問も、迷惑どころか里村にとっては大歓迎で、玲人が自分に会いたいと思っていてくれたことが何よりも嬉しい。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま…」
 そう言ってようやく玲人は身体を預けるように脱力した。
 もっと全てを自分に委ねてほしい。そう思うが、まだ里村から拒絶された恐怖が抜けない玲人にはもう少し時間が必要なのだろう。今はこうして触れさせてもらえるだけでも良しとするべきなのかもしれない。
 ぎこちなく背中に回された腕に笑みを誘われて里村は、いつか二人で暮らす日が来ることを思い描いていた。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act7

►2008/04/02 20:00 

>> ReadMore
 玄関から来訪を告げるチャイムが鳴っていた。始めは躊躇いがちに間を開けて数回。それが次第に細かいピッチになり何度も鳴らされた。
 里村はしつこく鳴り続けるチャイムに負けて、隣で眠る玲人を起こさぬように気をつけながら渋々ベッドから起き上がった。
 玲人に腕枕をしていた所為で左腕が痛い。そんな幸福な痛みに顔を緩ませつつインターホンのモニターを覗くと、そこには見知らぬ女性が写っていた。眼鏡をかけた生真面目そうな女性は何かのセールスにしては印象が硬すぎた。大体こんな早朝からセールスなど非常識にもほどがある。
 里村は先ほどまでのふやけた気分を一掃させて、あえて不機嫌な声で対応した。
「どちらさまです?」
 するとスピーカーから見た目通りのきっちりとした対応が返ってきた。
『わたくし、インターブレインから派遣されております徳島美智というものです』
 インターブレインという会社に聞き覚えはなかったが、女性の突き放したような話し方にセールスではなさそうだと感じた。「はぁ」と里村が曖昧な返答をすると、女性は言葉を続けた。
『荻久保玲人のマネージメントを担当しているものですが、そちらに荻久保はおりますでしょうか』
 マネージメントという言葉を聞いて里村は、玲人と決別する原因となったマネージャーを思い出していた。ヒステリックに「玲人と別れろ」とわめいた女性の声は今でも記憶に残っているが、今ドアの外にいるであろうこの女性からはあの狂気じみた印象は伺えない。声質も、こちらの女性のほうが若く澄んでいる。そのようなことを里村が考えていたのを相手も悟ったのか、女性はこう付け加えた。
『私はこの二月から新しく担当になったものです。怪しまれるのも当然かと思いますが…』
「いえ、失礼しました」
 例のマネージャーと別人だとわかった以上、里村は警戒を解くべきだと思った。なぜこのマネージャーと名乗る女性がこの部屋を知っているかはわからないが、玲人が信用して教えたのなら里村も彼女を信用してドアを開けるべきだろう。
 里村がドアのチェーンを外してドアを開けると、そこにはリクルートスーツに身を包んだ小柄な女性が立っていた。
「すいません。この様な恰好で失礼します」
 うら若い女性に寝乱れたパジャマ姿を晒すことを一言詫びると、女性も硬い表情のまま言った。
「いえ、こちらこそこのような時間に伺いまして申し訳ありません」
 何の動揺もない女性の表情に、逆に居心地の悪さを感じつつ里村は問う。
「それで、れ、……いや、荻久保さんですか?」
「はい。今日はこの建物の下で八時にと約束していたのですが、十分過ぎても荻久保が現れませんでしたので携帯に連絡したのですが繋がらず、失礼を承知でこちらに伺いました」
 女性の簡潔な説明に納得しつつ時計に目をやると、すでに時間は八時二十分をまわっていた。
「あ、時間が…」
「いえ、そう急ぐ必要もないのですが。起こしていただければ助かります」
 女性はそう言ったが、里村は急いで寝室へ向かった。ベッドの上で毛布にくるまってすやすやと眠る玲人を起こすのは躊躇われたが、ここは心を鬼にして、里村は玲人の肩をゆすった。
「玲人さん、起きて下さい。マネージャーさんがいらっしゃってますよ」
「う〜ん、…んんん」
 寝起きのよくない玲人はなかなか目を覚ましそうにない。仕方無く里村は玲人の弱点を攻めることにする。耳腔に舌を入れて思うさま舐めまわすと、玲人は寝ぼけながらも「いやん!」と可愛く鳴いて身体を震わせた。
「玲人さん、目、覚めましたか?」
 玲人は舐められた部分を手で庇いながら、うっすらと目を開いた。
「いま、なめた…」
 まるで子供のような口調で呟いて、玲人は涙目で里村を見上げる。本人としては睨んでいるつもりなのだろうが、里村には誘われているようにしか見えない。
「マネージャーさんがお迎えに来ていらっしゃってますよ。まずは顔を洗ってきてください」
「あ、そっか…。はーい…」
 寝起きのためか、いつもより幼い素直さを見せる玲人を抱きしめたくなる衝動に襲われつつ、里村は玲人の衣服を準備する。お泊まりをした時のための着替えなどがないため、昨日と同じ衣服になってしまうのが悔やまれる。同棲すれば、こんな時素早く玲人の衣服を整えてやれるのにと思う。まるで玲人の「奥さん」にでもなったような気分になって里村はそんな自分を自嘲する。
 顔を洗っても未だ眠気まなこのままの玲人に服を着せてやり、髪をセットしてやる。朝食を食べさせてあげられなかったことが気がかりだが、移動中にでも何か食べてくれればと思う。
「すいません、お待たせしました」
 玄関まで送り出すと、玲人が何かを思い出したように里村を振り返った。
「玲人さん、忘れ物ですか?」
 里村の言葉に「ううん」と首を振って、玲人が言う。
「今日、また来ていい?あの料理、食べに来てもいい?」
 昨夜、玲人はキッチンにある手付かずの料理の数々を見ていたのだろう。そしてそれが自分のために作られたものだと気付いたに違いない。里村は玲人の優しさに胸が熱くなるのを感じた。そこにマネージャーがいなければ抱きしめて口付けてしまいたい気分だったが、理性に制御された里村にそこまでの大胆な行動は取れなかった。
「もちろんです」
 里村がそう言って口元に笑みを作ると、玲人も嬉しそうに笑った。
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
 手を振る玲人が扉の向こうに消え、里村の胸に寂しさが宿る。しかし今夜の予定を想像すれば、気分はすぐに上向きになった。久しぶりに玲人と甘い時間を過ごせそうな予感に、里村の心はらしくもなく高揚していたのであった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act8

►2008/04/03 20:00 

>> ReadMore
 後部座席の玲人は今にも鼻歌でも歌い出しそうにご機嫌な様子である。恋人のことを考えてでもいるのか、夢見るような眼差しで外を眺め、頬を薔薇色に染めている。恋人とわずかでも一緒の時間を過ごせたことが玲人に良い影響を与えているのが手に取るようにわかる。
 美智は同性同士のカップルを現実に見たのは初めてだったが、思っていたような違和感も嫌悪感も全く感じなかった。それは玲人の女性的な容姿の所為もあるのだろうが、それ以上に二人があまりにも自然で、こう言っては何だが可愛らしいカップルだと感じたためだ。二人がいつ、どのような経緯で付き合うことになったのか美智には知る由もないが、まるで付き合い始めのような二人の初々しさに思わず応援したくなってしまった。
 インターホンからドスの利いた低い声が聞こえてきたときには内心焦りを覚えたものだが、玲人と話しているときに見せた男の表情は甘いとしか言いようがなく、やり取りからも二人が深くお互いを想い合っているのが伝わってきた。
 マネージャーだと名乗ったときに男が警戒したのが分かったので、自分が以前のマネージャーとは違う人間だと言ったのは大門から前任者の行いを聞いていたからだ。そうでなくても男は来訪者には余程気を付けているのだろう。確かに、玲人のマネージメントを請け負っている人間としては、彼らの仲は歓迎できないものなのかもしれない。
 いつ二人の仲がマスコミにバレてもおかしくはない。もしそれが世間に明らかになるようなことになれば、一般人であるあの男の生活に大きな支障がでることは間違いなく、また、男が一般の企業に勤めている身ならば尚更、肩身の狭い思いをしなければならなくなるだろう。
 しかし、玲人が幸せならば美智も二人の恋を出来る限り応援したいと思っている。特に今、玲人が浮かべている笑顔を見ていると、この笑顔を守りたいと心からそう思うのだ。


 玲人と美智がスタジオに到着すると、そこはちょっとした騒ぎになっていた。
「あ、ちょうど良かった!」
 美智たちを見るなりスタッフが安堵した顔を見せて、コードレスフォンを片手に駆け寄ってきた。
「今、先生あてにグレッグ・ニールソンという方から電話がありまして…」
 その名前に覚えのある美智はすぐに聞き返す。
「えっと、同性同名の方ではないのですか?」
「たぶん、ご本人かと…」
「うん、それミスター・プレジデントだよ」
 あっけらかんとそう言ったのは、後ろでやりとりを聞いていた玲人本人である。
「それ、繋がってるの?」
「え、あ、ハイ…」
「貸してね。ちょっと話してくるから」
 玲人はスタッフからコードレスフォンを受け取ると、「Hello?」と受話器に問いかけながら個室の中へと消えていった。
 その様子をみていた別のスタッフが関心しきりな様子で呟いた。
「すげーな、マジでニールソン大統領かよ。センセイの交友関係ってどうなってんだ?」
 センセイというのはもちろん玲人のことで、大門やシエラ以外のスタッフが親しみと尊敬の念をこめてそう呼んでいる。しかし彼らの場合、侮蔑的な響きも混じっているように聞こえるのは気のせいではないだろう。
「じゃあ、大統領とも昔付き合ってたとか?」
「マジかよ。まぁ、あり得なくもないか…」
 噂好きなスタッフ達が好き勝手に玲人の話題を口にするのを、美智は関わらないようにしながらも聞いているしかなかった。
 常に玲人の音楽活動に関わっている大門のようないわゆる「荻久保組」の人間ならば、このような好色な噂を口にすることは決してないが、今はシエラのアルバムが制作中のため外部からのスタッフが少なくなく、こうして口さがなくあれこれと玲人についての噂をたてるのを耳にすることが増えた。
「この間も有名な建築家がセンセイに会いに来てたんだって?」
「ああ、エドワード・ハーシェルだろ。マジで付き合ってたらしいぜ」
「なに、お前その情報どこ発信よ?」
「センセイから直接訊いたんだよ」
 マジかよ〜、と大声で叫ぶ男達を横目で見つつ、美智は内心呆れかえっていた。玲人が聞いたことに何でも答えてくれるのをいいことに、この男はごくプライベートな質問を下世話な好奇心でぶつけたらしい。そんな質問に正直に答える玲人もどうかと思うが、デリカシーの欠片もないこの男達にもうんざりする。しかし、次の瞬間、あまりにも物騒な単語に美智はハッと耳をすませた。
「………監禁、だろ?」
「そういうプレイじゃねーのか、それ」
「違うって。ここのスタッフがマジで焦ってたの知ってるもん俺。アーサー・ギルフォードに会いに行くって言ったきり五日間も連絡つかなくなったってさ」
「監禁されてたのか?うわ、それ萌えんな!」
「げぇ。お前も男イケるクチか?俺はいくらキレイでも勘弁だな」
「センセイくらい可愛かったらヤレるだろ」
 ゲラゲラと下品に笑う男達に美智の我慢も限界に近付いていたその時、響いてきた声は大門のものだった。
「お前ら、いつまで休憩してんだ?玲人はもうスタジオに入ってるぞ」
 ギクリと顔を強張らせて男たちは身体を小さくして、そそくさとスタジオの中に入っていった。
 あれ以上、玲人を愚弄するような話を聞かされていたら美智も黙っていられなかったと思う。代わりに大門が注意してくれたことに心の中で感謝したが、それを言葉に出すことは話の内容が内容だっただけに躊躇われた。そんな美智に大門が言う。
「あんまりあいつ等の話を鵜呑みにするなよ。まったく、困った奴らだ」
 美智には大門が何かを隠しているような気がした。それはまったくの勘だったが、まだ新入りの美智にはそれを聞く権利がない気がして、大門の言葉を素直に信じたふりをするしかなかった。
 しかし美智はその日のうちに真実を知ることになった。
 女子トイレで手を洗っていると、奥から話し声が聞こえてきた。その声から「荻久保組」でも数少ない女性スタッフの二人であることがわかる。
「先生、最近元気良さそうだよね」
「なんか、幸せオーラ出ちゃってる感じ?」
「そうそう!…先生にはさ、幸せになって欲しいよね」
「ホント…。あんなことあったばっかりだしね…」
 そのしんみりとした口調に、やはりそう遠くない過去に何かあったのだと美智は知る。
 居ても立ってもいられず美智は彼女達に近づいた。玲人の知らないところで彼の真実を聞き出すことは、あの男達とやっていることは同じなのだと分かっていたが、その時の美智はこれは知っておくべきことなのだと信じて疑わなかったのだ。
 化粧を直しながら鏡の前で談笑していた彼女たちは美智の顔を見て顔を強張らせたが、美智が必死に頼み込むと、「私達が言ったってこと、言わないでね」と前置きして、去年の12月に起きた出来事について語ってくれたのだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪




 
Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act9

►2008/04/04 20:00 

>> ReadMore
 玲人が昔アーサー・ギルフォードと交際していたという事実は、欧米では有名な話だそうだが日本では意外とあまり知られていない。しかし、玲人のスタッフの間では周知の事実であり、また、それを口にしないことは暗黙の了解であった。美智は玲人とギルフォード氏の噂を聞いたことはあっても、その時はあまり関心のあるトピックでもなかったので、その日までその事実を忘れていた。
 去年の12月の始め、玲人がギルフォード氏に会いに行くと言ってイギリスに渡った後、五日間連絡を絶ち、再び日本の空港に戻ってきた直後にその場で倒れてしまったという出来事はスタッフの間に大きな衝撃を与えた。玲人はスタッフに心配をかけたこと、迷惑をかけてしまったことを詫びたが、詳細を語ることはなかったという。だから美智が彼女達から聞いた話はあくまで推測の域を出ない。
 空港で倒れたという騒動の後、玲人はすぐ仕事に復帰したが、明らかに衰弱している様子で両手首にはそこを一周する痣があったという。それらがスタッフ達の間で「先生はギルフォード氏に監禁されていた」という説を確実なものとしたらしい。
 頼りない情報だが、手首の痣は確かに異常な感じがする。もしそれが本当だとしたら、玲人は何らかの拘束具で手首を戒められていたと考えてもおかしくない。
 玲人とギルフォード氏の間に何があったのか、それらの情報をあわせて考えてみればそれがあまりよいものではなかったことが想像できる。
 今は何事もなかったように振舞っているが、玲人のあの笑顔の裏にはきっと抱えきれないほどの苦しみがあるのだろう。勝手にそんな想像をして、美智はこの話を自分の胸の内に留めておこうと心に決めたのだった。


 その日里村は定時に仕事を終わらせ、夜に備えて準備をしようと足早に地下鉄乗り場へと向かっていた。そうはいっても料理は昨日作ったものがそのまま残っているので、準備といってもそんなにすることはない。それに玲人からは『夜八時には伺います』と連絡をもらっていたので時間は十分にある。しかし、久し振りに玲人と夜を過ごすことができるという期待に、里村は寄り道をしようなどという気分にはなれなかった。
 これから地下道に入ろうかというその時、里村の携帯が着信を告げた。玲人かと思いきや、その電話は百合花からのものだった。
『もしもし、里村?』
 百合花からの連絡はいつも唐突だ。何の用だろうかと思いながらも、里村は「はい」と返した。
『今、暇?ちょっと来てほしいねんけど』
「今、ですか?」
『そう、今。来られへん?ほんのちょっとでええねん』
 里村はもちろん断ろうと思っていた。これから玲人をもてなさなければならないという時に、寄り道などしていられない。それに、今日里村に予定があることはすでに百合花は知っているはずだ。
 しかし、百合花は甘えた声で懇願してくる。
『ほんまにちょっとでええねん。渡したいものがあるだけ。受けとってくれたらそれでええから。な?』
 今日はバレンタインだ。もちろん、里村のバッグにも玲人へプレゼントするチョコレートが入っている。百合花も、里村に義理チョコをくれるつもりなのかもしれないと、里村はそう解釈した。
「ちょっとだけというなら。今日はこれから予定がありますので、あまり長くはお付き合いできませんがそれでよろしければ」
 玲人のことで頭がいっぱいだった里村には、百合花の本当の目論みなど深く考える余裕もなかった。この時もう少し警戒していればと、のちのち後悔することになるとはこの時の里村に分かるはずもない。
『じゃあ、帝都ホテルの8501号室におるし。待ってるから』
 なんでホテルなのか、と問う前に電話は一方的に切れてしまった。
「しまったな…」
 呟いてみたが、もう一度電話をしてそんな質問をすることも躊躇われた。あいにく、玲人の来訪予定時刻までは時間がある。里村は仕方なく、百合花に言われた通りのホテルへと向かったのだった。


〜To Be Continued…〜




にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

Sweet Bitter Chocolate act10

►2008/04/05 20:00 

>> ReadMore
 里村はその足で帝都ホテルへと向かった。事務所からはそう遠くない距離だったので、歩いてもさほど時間も掛からずに到着した。フロントに話すと、前もって話を通していたらしく、あっさりと部屋に案内してもらえた。
 それにしても、この帝都ホテルは日本でも有数の名門ホテルで、二十歳そこそこの女性が一人で泊まるような場所ではない。このような格式の高いホテルを待ち合わせに使ってしまう百合花の感覚はやはり自分のような庶民とはどこか違うのだろう。
 ドアをノックすると、間を置かず百合花が顔を出した。基本的にいつも明るい百合花だが、今日は一段と機嫌が良いようだ。満面の笑みで里村を室内に迎え入れて、着座を勧めた。
「それで、私に渡したいものとは何ですか?」
 里村の早く用を済ませて帰りたいという焦りを感じたのか、百合花は少しムッとした表情になる。
「そんな、あからさまに急がんでもええやん」
「すいません…」
 百合花には申し訳ないが、里村はどうしても時間が気になってしまう。まだ時間に余裕があるのは分かっているのに、焦る気持ちはどうにもならない。
「ホンマにその人のこと好きやねんな。どうせこの後、その女とデートなんやろ?」
 図星を突かれて里村は押し黙るしかない。機転を利かせて上手く誤魔化す方法を知らない里村は沈黙で肯定することになる。
「里村の彼女って、どんな女なん?ウチより綺麗?ウチじゃあかんの?」
「何をおっしゃってるんです…」
 いつになく、百合花の表情は真剣だった。いつもの、ふざけ半分で里村をからかっていた百合花ではない。百合花の本気を感じ取って、里村はにわかに身体を緊張させた。
「ずっと里村が好きやった。ちいさい頃からずっと里村しか見てへんかった。里村のお嫁さんになるんが夢やったのに…。なんで他の女なん…?」
 次第に涙声になる百合花を、里村はその時初めて一人の女性として認識した。小さな頃から見知っていた少女はいつの間にか一人の立派な女性になっていたのだと、里村は面映ゆい思いで百合花を見つめた。確かに百合花は幼い頃、よく「里村のおよめさんになってあげる」と言っていたものだった。その時は子供の可愛らしいませた発言に「ありがとうございます」と笑ってかわしていたのに、今の百合花相手では冗談にならない。どうしたものかと困惑する里村に、百合花はその大きな瞳に涙を浮かべて縋り付く。
「いやや。里村が他の女と付き合うなんて許さへん。里村は、ウチのやもん…!!」
「お嬢さん…」
 子供のような駄々をこねて胸に飛び込んできた百合花を引き剥がすこともできず、里村はなだめるようにその背を優しく撫でさする。
「すいません、お嬢さん…」
「…あやまらんといて」
「気持ちはとてもありがたいです。でも、お嬢さんにはもっと相応しい方がいらっしゃいます」
「いやや。ウチは里村がええ」
「すいません。しかし私はお嬢さんの気持ちには応えられない」
「そんなにはっきり言うことないやん…」
「すいません…」
 こういうとき、どうすれば相手を傷つけずに断ることができるのか里村にはわからない。振られて傷つくことには変わりはないのだから、はっきり言うべきなのかもしれない。しかし、泣いて必死に縋り付いてくる百合花を振り払うことなど里村にはできなかった。
「私にはどうしても、その人でなければ駄目なんだと思います」
「…結婚、するん?」
 そう出来ることならそうしたい。しかし、同性同士の結婚を日本の法律は認めていない。気持ちだけではどうにもできない問題もある。
「そうですね…。出来るならそうしたいんですが…」
「なんか、問題でもあるん?」
「まぁ、色々ありまして…」
「ふぅん」
 百合花はいたずらな光を瞳に宿して小さく呟いた。
「じゃあ、チャンスはまだあるわけや」
「…?なんです?」
 百合花の呟きを聞き逃した里村は、彼女の本性にまだ気付かない。どんなに見た目が大人になろうともやはり里村にとって百合花は、幼い頃に求婚してきた無邪気な可愛い少女の記憶が強い。
「里村、喉乾いたやろ。今、飲みもん持ってくるし待っといて」
 不意に立ち上がった百合花に里村は、
「いえ、もう行かなければ…」
 と制止を入れたが、「もうちょっとくらいええやん」と聞き入れてくれない。
 戻ってきた百合花はその手にワインの入ったグラスを持っていた。
「それじゃ、乾杯しよ!ウチかてもう飲めるようになったし」
「はぁ…」
 室内に飾られている華美な柱時計に目をやりつつ、里村はグラスの中のワインを口にする。しかし、ワイン特有の渋みと共に薬品の香りが口の中に広がった気がして、里村は眉をしかめる。
「何ですか、これは…?」
「あ、バレた?それ、睡眠薬入っててん」
「睡眠薬…?」
「かなり強いらしいで。それに里村は身体大きいから、量多めにしといた。どないな感じ?もう効いてきたん?」
 アルコールと合わせた為か、胃が焼けつくような熱さを感じたとたん、酩酊感とは違う眩暈が里村を襲う。それはあまりにも強烈で、身体を真っ直ぐに保っていられないほどだった。
「おじょう、さん…?」
「ごめんな、里村。でも、里村があかんねんで?里村がウチを選ばんかったのがあかんのや」
「クッ…」
 ついに里村は頭を抱えてソファに伏した。徐々に霞んでいく意識の中、ただ玲人のことばかりが気がかりだった。


〜To Be Continued…〜



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
↑読んで下さってありがとうございます☆お気に召しましたら、ポチっとお願いします♪



Return <<

テーマ : 自作BL小説 - ジャンル : 小説・文学

Sweet Bitter Chocolate(完結) | Comment(0) | Top ▲

 | Blog Top |  Next»»

ブログ内検索


RSSフィード

  • 最新記事のRSS
  • 最新コメントのRSS
  • 最新トラックバックのRSS

リンク

  • 星歐花様:「小悪魔&天使のウェーブ☆」
  • 古田様:「月夜の晩に…」
  • 古田様:「星降る夜に…」
  • 日向夏姫様:「DRAGON GATE」
  • 遠麗様:「BL Break 100%」
  • 遠麗様:「BL Daybreak」
  • ジェイムス李様:「Masquerade」
  • バクテリア王国談話室
  • Chaos Paradise R18様
  • BL☆Search様
  • FC2カウンター

    現在の閲覧者数:

    ブログ村ランキング

    にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

    WEB拍手

    素材WEB拍手

    ガンダム名言録

    うちのコです。

    By FC2ブログ

    今すぐブログを作ろう!

    Powered By FC2ブログ

Template Designed by *Essence. Material by web material *Essence.
ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校